少し強引に頼んだら、やっぱり引き受けてくれた。
ごめんね、田中さん。
その時はさ、この人がお人好しで良かった、
って思っちゃったんだよね。
困った顔を見たらさ、ちょかいもかけたくなったんだ。
……だけど。
『……私には本当の葵くんでいいからね』
『なんなら、私が葵くんを守ってあげるよ……!?』
田中さんは、こう言ってくれたから。
こんなこと言われたのは初めてで、
もう、正直に言う。
その時も、教室で目が合った時も、
俺さ、
嬉しかったんだよね。
「じゃあこのページは次の授業までにやってくること。宿題ねー」
数学の教師の言葉にハッとした。
……考えごとに夢中になりすぎだから、俺。

