葵くん、そんなにドキドキさせないで。



私が葵くんのことを好きだって、バレた?


ううん、そんなはずない……。



じゃあ、なんで……?





「そーだ、そのお人好しな性格、どうにかした方がいいんじゃねぇ?」





意地悪く笑って、屋上を出ようとする葵くんに、ハッとした。



ま、




「待って……!」





慌ててその腕を掴んで、引きとめる。



……だけど。






「……田中さんといると、自分が自分じゃなくなんの。

嫌なんだ、それが」





イライラする。





『……田中さんを見てると、イライラする』





前にも言われたその言葉が、

グサリと胸に刺さる。





葵くんを、これ以上引きとめることは、




私には出来なかった。