「そんな、朝はあったのに・・・・」
わたしが愕然としていると、母がすぐ傍まで来て、わたしの肩をトン、と叩いた。
「そんなにがっかりするなんて、いったい何落としたのよ?」
母に訊かれて渋々頭をあげたわたしは、「・・・・べつに。たいしたものじゃないから」と答えた。
内心では、消えた手紙のことで気持ちが騒がしかったけれど・・・・
・・・・あの手紙は、いつの未来に飛ばされたのだろう。
母のボールペンは一日で出てきたけれど、わたしの手紙も、明日には戻ってくるのだろうか?
わたしは、あの手紙を早く取り戻したい気分だった。
昨日、あの手紙を置いたときは、神楽さんへの気持ちが胸にあふれていた。
そこに記した日付は、わたしが神楽さんへの恋を自覚した記念の日になるはずだった。
だけど今は―――――――――――――
その日付を見ても、辛いだけだ。
もう、誰かを信じて傷付くのは、イヤだから・・・・・
わたしは小さく頭を振って、店を後にしたのだった。
部屋に戻ったわたしは、ふと、不在着信に気が付いた。
神楽さんからだ。
・・・・どこからかけてきたのだろう。
一瞬、あの女の人が隣にいるところが浮かんでしまい、わたしは力任せに瞼をおろした。
もう、・・・・・神楽さんとは会わない方がいい。
彼の優しい話し方が、穏やかな笑い方が、脳裏にこびり付いているけれど、
今ならまだ、彼との出会いをいい思い出で終わらせるから・・・・・・