「なんだか逆に気を遣わせてしまったみたいですね・・・・」
わたしは封筒をもとに戻しながら呟いた。
「でも、財布が見つかったことを知らせたら、本人もご両親もとても喜んでましたよ?財布の中に亡くなったお祖母さまからもらった御守りが入っていたそうですから。お金はともかく、御守りが戻ってくることが嬉しいと言ってました」
・・・・あの御守りは、そういうものだったんだ。
「それはよかったです。東京までお持ちした甲斐がありました」
まだ完全にふっきれていない状態で東京に来ることになって、どこか構えていたところはあるけれど、やっぱり、持ってきてあげてよかった。
本気でそう思っていたのに、
次に聞こえてきた声に、全身が冷えついたのだった。
「――――――――芦原?」
わたしの斜め後ろから降ってきたそれは、もう二度と、会うことはないと決めていた人のものだった・・・・
振り返らなくたって、すぐに分かる。
少し前までは、毎日毎日、ずっと顔を合わせていた人だから。
わたしは表情を石のように固めてしまい、今、自分がどう振る舞うべきかが判断できなかった。
「芦原さん・・・・?」
うんともすんとも言わないわたしに、神楽さんが心配して声をかけてくれる。
わたしは微かに神楽さんと視線を重ねて、それからゆっくりと、後ろを向いた。
そこに立っていたのは―――――――――――――