神楽さんとの待ち合わせ場所は、丸の内南口にあるモニュメントの前だった。

待ち合わせ時刻にちょうど合う新幹線が予約できなかったので、わたしは30分も前に着いていた。

10月も後半に入って気温が下がってきたので、30分も外で待ってるのはどうかと思ったけれど、前の職場がここから近いので、へたにウロウロして思わぬ人に出会うのは絶対に避けたい。

わたしは神楽さんが来るまで、モニュメントが見える円柱の陰で立って待つことにした。
ここなら、知り合いが通りかかってもすぐに気付いて移動できるだろう。

どうせ、あの頃とは髪型も変わってるし、服装も通勤時には着たことなかったマキシスカートにデニムジャケットというカジュアルなものだから、例え知り合いが通りかかっても、わたしと気付かないかもしれないけれど。

そう自分を勇気づけたものの、そのすぐ後に、もうあの頃の自分はいないんだな・・・と、心の深いところで再認識して、少し、ヒリリとした。


大学時代から数えて、もう何度このモニュメントの前で待ち合わせしたか知れない。

待ち合わせの相手はさまざまだったけど、その時のわたしは、東京に住んでいて、この街に生活を置いていた。

なのに今日は、はじめて、アウェーとしてここで待ち合わせをしているのだ・・・・


柱にもたれかかり、デニムジャケットのポケットに手を突っ込んだり出したり、ソワソワしていた。

誰か顔見知りに会わないだろうか、という心配と、はじめて会う神楽さんに緊張しているのと、とにかく、ドキドキが高まっていった。


どれくらい経った頃だろうか、ひとりの男の人が、すーっと、横長のモニュメントの中央付近で立ち止まった。
時刻は2時の10分前。

この人が、神楽さん・・・・?