コンコン…………。


部屋をノックする音が聞こえてきた。



「陽平さん、旦那様と奥様が『お茶でも』とお誘いされてますが。」


「わかった。行くよ。」


「ではお待ちしております。コーヒーで宜しいでしょか?」


「莉乃は?」


「はい、構いません。」


「静江さん、コーヒーを2つで。」


「はい。」



ドア越しに会話されていく不思議な光景に戸惑ってしまう。


陽平を見れば、何事もなかったようにベッドから下りていく後ろ姿を見つめる。



「莉乃、彼女は静江さん。ずっとウチで働いてくれてる。」


「あっ、そうなんだ。」


「これからも会うと思うから。」


「あっ、うん。」



お手伝いさん。


やっぱり陽平は御曹司なんだ。


二人で過ごしていれば普通の男と人なのに。


世間では御曹司なんだ。



「莉乃、行くよ。親父に紹介する。」


「紹介?いやいや、そんないいよ。」


「お茶に行くだろ?ほら、莉乃、行くよ。」