「双葉部長?」



今度は私の隣から驚きの声が聞こえてきた。


陽平が勝ち誇ったように名刺をポケットから取り出している。


隣に立つ大樹は唖然と様子を伺っているようだ。



「フタバ食品の双葉です。」



名刺を差し出す陽平の顔は得意げに見える。


まあ気持ちは分からないこともないが、親のコネだろ。


そう呟きたくなるのは私だけじゃないと思うが。



「フタバ食品…………。」


「莉乃に何か?」


「…………明日、京都に帰るから、挨拶がてらランチに誘いました。」



何故に敬語?



「俺も…………。」

「すみませんが、今日は遠慮してください。少し話があるので。」



陽平の言葉を遮った陽平は敬語なのに強気だ。


ちらりと陽平と目が合う。



「莉乃、楽しんできて。」



大人の対応をする陽平がいた。


エレベーターに乗り、陽平とは会社のエントランスで別れた。


陽平がフタバ食品の社員と駅へ向かっていくのを見送った。