寝ておいたら?と言われて寝させてもらうことにした。
 しばらく寝て起きてみると頭痛は幾分良くなっていてリンビングの方へ足を向けた。

「どう?良くなったんじゃない?」

「えぇ。まぁ少しは。」

「ねぇ。ルールを決めない?」

「またルールですか?」

 落ちたら負けたのゲーム。
 好きになったら負けだ。
 キスはペナルティーそれ以上は負けと同じ。

 他に何を……。

「会社では今まで通り。
 もちろん一緒に住んでいることも内緒。」

 あぁ。そっちの……。

「俺は隠さなくたっていいんだけどね。」

「嫌よ。とうとう笹島まで園田の毒牙にって噂を立てられたくないわ。
 いくら交渉しているって言ったところで信じてもらえると思えないもの。」

 噂好きな社内の人々。
 俺はイメージ通りだとしても真面目で鉄壁な笹島先輩がとなればイメージダウンかもしれない。

「いいよ。分かった。
 落とせば公言してもいいってことだよね。
 笹島先輩、俺に骨抜きにされたって。」

「されないわよ。園田くんに落とし穴へ落とされるくらいないわ。」

 フンッと綺麗な髪を揺らして綾は部屋を出て行った。
 酔いが醒めたお陰で空腹を感じて、時計を見ると3時を過ぎたところだった。

 知らなかったけれど、綾はゲーム好きの負けず嫌いだった。
 俺の提案に乗ったくらいはある。

 トランプをしてみたり、ジェンガをしてみたり。
 テレビゲームもして盛り上がった。

「トランプなんかを置いてるなんて意外だわ。」

「こっちこそ綾がこんなに負けず嫌いなんて。」

「負けず嫌いな女は可愛くないでしょ?
 素を隠さなくていいって楽ね。」

 好かれない為だろうけど、これが素なのかと思うとそっちの方が好感が持てる。
 きっと太郎さんも歴代の彼氏もこの綾の姿を知らないのだ。

「綾はどんな顔してても可愛いよ。」

 微笑みを向けても動じることがなくて、こちらもずいぶん前から本音しか言っていない。

「尚が言うと嘘っぽいからダメよ。
 そんな軽い台詞は。」

 本音でも軽く見られたら何を言えばいいのか。
 ま、まだまだこれからだからね。これからこれから。