「じゃ尚でいいわね。
 可愛い。園田くんにぴったりね。」

 可愛い年下男子をアピールしたは、したけど、なんとなく再びの面白くない。

「可愛いは綾でしょ?
 そうそう。さっきの太郎さん?
 その人のこと愚痴ってもいいよ?
 今日くらい慰めてあげますから。」

 慰めて……体も慰めて……ってね。

「そうねぇ。
 太郎さんは正直な人なのよね。」

「はい?騙されておいて?」

 信じられなくて耳を疑う。
 それなのに綾は微笑んでいる。

「正直だからこそ結婚しようって言った女がいるのに、他の女に目が行くんでしょ。」

「はぁ。深い洞察力で。」

「女ってそういうどうしようもないところが放っておけなかったりするのよ。
 尚には難しかったかな?」

 今度は年下というよりも子ども扱いされて些かご立腹だ。

「ダメ男が好きだって公言してますけど?」

「馬鹿ね。ダメ男がいいわけじゃないのよ。
 私から見たら尚は素敵な男性だなぁとは思うけど隙がないのよね。」

 さらりと素敵とか言うのはずるい。

「隙ねぇ。それって女はでしょ?」

 缶ビール片手に笑う綾は綺麗な爪でプルタブを弄ぶ。

「それは男も女も。
 付け入る隙があった方がモテるのよ。
 ま、隙がないって言われる私が尚のこと言えないんだけどね。」

 そう笑う綾はよく自分のことが分かっている。
 周りの男どもは綾にアプローチする勇気さえもない奴ばっかりだ。

「余計な邪魔をしたかな。
 あのまま話し合いでもして、元鞘に戻ったりした?」

 太郎さんにそれほどの魅力があるとは思えないけど、浮気された男を悪く言わない綾を見ていると……。

「そんなわけないじゃない。
 相手の子は身籠ってるのよ?
 ……もうこんな話はおしまい。
 付き合ってくれるのなら、もっと楽しいことしましょう?」

 色っぽくウィンクした綾に、どんな楽しいことなのかなぁとワクワクした。

 慰め合ってね。慰め……慰め?

 握った拳を差し出した綾はその拳を上下させていた。

 本気の試合が始まるわけ?
 思い描いていた試合からは2、3度変換されたものだった。

「まずは『あっちむいてホイ』ね。
 負けた方がビールを飲むのよ?」

「はい?」

 理解できない俺の方が普通だよな?
 それなのに綾は普通に話を進める。

「いいから。酔い潰れたら負け。
 無理はしないで。
 急性アルコール中毒で救急車は勘弁よ?」

 最初はグーと出す綾につられて出すと負けだ。

「あっち向いて……ホイ!
 やだ〜!外れた!」

「ちょ、ちょっと待ってください。」

 何これ。すっごい予想外!

「何よ。」

「これ、いつも太郎さんと?」

「まさか。やったことないわよ。」

 そっか。優越感………感じていいのか?

「やるの?やらないの?」

 よく分からない綾のペースに乗せられて酔い潰れたら負けのゲームが始まった。