自分は、専門外であることや自分では治すことが出来ないことに悔しがっていた。


「悔しいんだ。1番大事なときに、1番大事な息子のオペができないなんて。お前には、まだまだ生きてもらいたい。まだまだ、いろんな世界を感じてもらいたい。色んな人と恋をして、色んな出会いをしてもらいたい。」


「だから、一緒にロンドンにいってくれ…」


ここまで懇願されて、断れるわけがなかった。


「ああ…分かったから。行くから。ロンドンに行くから、もう泣くなって。」


まるで、小さな子供のように泣きじゃくる親父を抱き締めると、ああ、俺は大切なものを見失っていた気がした。