「違う…また失敗した」


男は舌打ちをして壊れた笑い方をしている女を冷めた目で見ていた。

全裸の女は男を狂気に満ちた目で見つめてけたけた笑っている。


その目は――


「この目に見合うものでなければ」


少し吊った切れ長の美しい目にこんな狂気の光を宿してはいけない。

この目の持ち主は、それはそれは気高く美しく、美しい少女だったのだから。


「返してもらうよ」


笑い続けている女の両目に掌を翳すと、女は突然動きを止めてそれっきり動かなくなった。

美しい肢体は男なら誰もが息を呑みそうなほどに扇情的だったが――男は大した興味も沸いていないのか、取り出した両目が腐らないよう術をかけて懐に仕舞いこんだ。


「何故こうも失敗ばかりなのか。完璧な手足、完璧な胴体、完璧な顔の女を揃えたというのに気に入らない。あの女はどんな女だったかと思い会いに行ったが…あの女より美しかったと思わないか?」


誰かに語りかける。

暗闇の中、それに返事する者の声が在った。


「…はい」


「なのにこれは完璧じゃなかった。目を入れた途端心も狂ってしまったのは目のせいではなく何かが作用したのか。それはどの部位だったのか。研究しなければ」


「…はい」


「お前を作って以来何十年も傀儡を作らなかったが、あの目を手に入れてからまた作りたいと思ったからこうして努力しているのに。…何故だ!」


男が倒れた女の腕を乱暴に掴むと――その腕はあっさり取れた。


「何故だ!何故だ!!」


男が倒れた女の足を乱暴に蹴ると――その足はあっさり取れた。


「俺の腕が足りないというのか?そんな馬鹿なことがあるか。俺は唯一無二の最高最強の傀儡師なのだぞ」


荒い息を吐きながら背後に居る女を振り返って笑んだ。


「そうだろう?」


「…はい」


「おいで」


呼ばれた女はゆっくり男に歩み寄り、その腕に抱かれて優しい手つきで髪を撫でられた。


「お前以上の最高傑作を作るのだ。さあ、また材料を集めよう」


口角を吊り上げて笑う男は、足元に散らばる部位をまた蹴った。

あの目に見合う傀儡を。

美しい材料を求めて、夜を彷徨う。