宵の朔に-主さまの気まぐれ-

ただただ、乱暴だった。

自分はもの扱い――個として扱ってはもらえず、ただただ欲望を満足させるために相手にされていた。


心を殺した。

強く目を閉じていた。

ひたすら願うのは、“早く終わって”と心の中で叫び続けること。


叫んではいけない。

これ以上犠牲を増やしてはいけない。

だからだから…


これで終わりにして――


「お前は上物だな。このまま別れるのが惜しい」


「…」


「言葉を交わすのも嫌か。ふふ、まあそうだな、こんなことをされては言葉も出まい。さて、最後にその美しい目を頂こうか」


――事が終わった後宣言通り、男は人差し指と中指を凶姫の両目にあてて何かを呟いた。

…痛みはない。

だが、目が…目玉がそこから無くなる感触がして、痛みからではなくその異質な恐怖感で叫んだ。


「いやぁ…っ!」


「痛くはなかろう?せめてもの俺からの慰みだ。ふふふ…紅玉のように美しいな、お前の目は。これでいいものが作れる」


何を、と叫びたかったが、この男をこれ以上言葉を交わしたくはなかった。


無残に引き裂かれた着物の上で力なく横たえたまま、もう開かない瞼を悔やんで惜しんで、喉で叫んだ。


「…ごめん、なさい…」


「…!?」


もう目は見えなかったが、その声は男のものではなく――若い女の声だった。


「私の主が…ごめんなさい…」


「あなた…誰…!」


「余計なことを言うな。行くぞ」


最後に男の声がしたかと思うとふたりの気配は煙のように消え去り、独り残された凶姫はそこでようやく――大きな声で、泣いた。


泣いた。

ただただ、泣いた。

全てを奪われ、家柄で決められたとはいえ優しかった許嫁の元に嫁ぐまで誰にも身体は許さずその日まで純潔を保とうと決めていたのに。


叫んだ。

ただただ、叫んだ。


全てを呪い、この世の全てを恨んで、叫び続けた。