宵の朔に-主さまの気まぐれ-

晴明が到着して神前式が始まると、親族一同は晴れ晴れとした表情で朔と輝夜を見守った。

妖が神前式とは一体何事だと思ったがどうやらこの家の伝統らしく、皆が慣れていて落ち着いていたので凶姫と柚葉も恙無く式を進める事ができた。

途中暁が何故抱っこしてくれないのかと不満そうな声を上げていたが、天満が宥めてくれていたため大泣きするともなく三三九度にまでこぎつけた。


「これを飲んだら終わりなの?」


「式自体は終わるけど、これで終わらないと覚悟した方がいい」


「え?」


「大宴会が始まるから」


ーーその規模たるや。

朔はそれ以上教えてくれなかったため、これを飲んだら正式に夫婦になれるのかと感慨深くなって盃に注がれた酒を見つめているとーー


「飲むのを躊躇っているようだが、夫に何か不満でもあるのかな?」


「えっ?ち、違います!」


晴明に茶化されて慌てて酒を口にすると朔も笑いながらさらに続き、正式に夫婦と認められると息吹が涙ぐんでいるのが見えた。


「朔ちゃん輝ちゃんおめでとうっ」


「ありがとうございます。父様の未婚記録より前に夫婦になれてとりあえずほっとしました」


「……」


十六夜は黙っていたが表情は幾分か穏やかで、輝夜も三三九度を終えて式が終了すると、それまで大人しくしていた弟妹たちにわっと囲まれて皆が一斉に喋り始めた。


「兄様素敵!」


「お嫁さんふたりとってもきれい!」


「ほら、暁ちゃん抱っこしてあげて」


凶姫が暁を抱っこするとへらっと笑った我が子がぺたぺたと胸に触ってきて、朔が凶姫の肩を抱いて皆に笑いかけた。


「腹が空いているみたいだから後で合流する。
先に始めていていいぞ」


「待ってました!」


大宴会が始まる。