宵の朔に-主さまの気まぐれ-

屋敷が近付いて来ると、門の前で天満が待っているのが見えた。

もちろん門の前にも人だかりはできていて、天満が抱っこしている子が現当主の子であることもすでに知られていて、皆がその可愛らしさを口々にしていた。

暁はもちろんのことだが――正装姿の天満も男映えしていて美しく、哀愁漂う少し垂れた目に撫でられた女たちは腰が砕けそうになって列が揺らいでいた。


「あの子全然物怖じしないのね」


「暁は大成するだろうな。まあ仕方ない、俺とお前の子だから」


「親馬鹿にも程があるわよ、そんなんだと暁が好いた男を連れて来た時あなた激怒しそうね」


「うん、雷親父になる覚悟はすでにできてる」


凶姫を笑わせて門の前に着くと、朔たちに気付いた暁がもがいて手を伸ばした。

猫又から降りた朔は天満から暁を受け取って人々の列に近付いた。


こんなに近くで百鬼夜行の主を見ることがなかった人々は、朔が半妖であり、人と妖双方にとって恐ろしい存在と知りつつも、その穏やかな美貌と人懐こい笑顔に恐ろしさも忘れて朔と暁に見入った。


「この子が次の当主になる。皆、よろしく頼む」


わっと歓声が沸いた。

女の当主は今まで例がなく、しかもすでに顔が整っていて物怖じしない赤子に皆はほう、と声を漏らしてまた可愛らしさに見入った。


「そしてこれは俺の妻だ。そしてあっちは俺の弟とその妻。俺の子を抱いていたのも弟だ。皆で力を合わせて皆が安全に暮らせるよう尽力する。改めて今後もよろしく頼む」


花嫁行列の中には十六夜と息吹の姿も在った。

先代の姿を今まで見たことがなかった者も多く、この日の幽玄町は歓声に沸き返って止むことはなかった。


「主さま、いよいよ近付いて来たんだね」


「…そうだな」


新たな旅立ちの時が。