宵の朔に-主さまの気まぐれ-

天満は暁と共に留守番をしていた。

目が合うと必ずにこっと笑いかけてくる暁を腕に抱っこしながら、上空でずっと旋回している鳳凰を眺めていた。


「幸先がいいなあ。暁、君の未来は安泰なんだろうね」


「あぅぅ」


ちょんと頬を突くとその天満の指を握ってにこにこしている暁に、きゅん。


「なんて可愛いんだ君は!朔兄、僕に暁をくれないかな…」


…半ば冗談とは思えないことを口にして縁側で寛いでいると――視界の隅に赤い着物姿の女の子が座ったのが見えた。

彼女はもうずっとこの屋敷に居る座敷童で、滅多に姿を見せることはないが、こうしためでたい席には姿を見せる傾向にあった。


「座敷童、お前はまだ屋敷に居てくれるよね?」


「私はまだまだ出て行かない」


「この子の遊び相手にもなってくれるよね?」


「うん、なる。沢山遊んでもらう」


「はは、遊んでもらうのは暁の方じゃなくてお前の方か」


歓声は鳴り止まない。

全ての者が出払ってもぬけの殻となった屋敷にふたり…いや三人で白い息を吐きながら澄んだ空気を楽しんだ。


「天気が良くてよかった。朔兄と輝兄の晴れの舞台だもんね。もう僕も独り身になってかなり長いけど、幸せそうな姿を見てると僕も幸せになった気がするよ」


「あぅ、あぅっ、だぁー」


「お前もこの子を通じて幸せになれる。私がこの屋敷に住んでいる限り皆幸せになれる」


「よろしく頼むよ」


天満が目元を和らげると、暁は手を伸ばしてぴとぴとと天満の頬に手をあてて足をばたばたさせて喜んでいた。


「ひとまずはこの子が可愛すぎて男にもてすぎて大変な目に遭あいやしないかってそれが心配かな」


溺愛体質で心配性なのは一家の気質。

天満ももれなくその気質で、座敷童がふふふと笑って暁の頭を撫でた。