宵の朔に-主さまの気まぐれ-

柚葉の仰天告白は皆を絶叫させた後、徐々にそれを実感した面々が黙り込んだため、部屋には静けさが広がった。


「輝夜…そんな話は聞いてなかったんだが?」


「すみません、まだ妊娠初期も初期なので、もうちょっと様子を見てからお知らせしようと思っていたんですが…お嬢さん、話が違うじゃないですか」


「だって芙蓉ちゃんが緊張してたから少しは気が紛れるかなって思って…」


「す、少しどころじゃないわよっ、柚葉、おめでとう!素敵だわ!私にもお世話をさせてね?」


凶姫と柚葉がきゃっきゃと騒いでいる中、息吹たちはざわざわ。


「輝ちゃんったら…これじゃ朔ちゃんと同じじゃないっ」


「それは全力で謝りますけど母様、不平を言いつつ顔がものすごくにやけてますよ」


「だってだって孫が一気にふたりも増えるんだよっ?輝ちゃんちょっとこっちに来なさいっ」


びくっとした輝夜だったが、怒られることは想定していたため若干猫背になりながら息吹の前に座ってしおしおしていると、息吹はぴっと背筋を正して偉そうにふんぞり返った。


「私に言うことは?」


「ええと…ごめんなさい」


「違うでしょ?‟孫の世話をよろしくお願いします”でしょ?」


「怒らないんですか?」


「どうして?怒るわけないでしょ、喜ぶところでしょっ?おめでとう輝ちゃんっ!十六夜さんに知らせなきゃっ」


輝夜をぎゅうっと抱きしめた後脱兎の如く部屋を出て行った息吹を見送った後、雪男はにやにやする顔を片手で覆いながら、わざとらしく大きなため息をついた。


「おい、まさか輝夜の子も俺が面倒見なきゃなんてことは…」


「よろしくお願いしますね、頼りにしていますよ」


皆がにこにこ、にやにや。


「柚葉、体調は大丈夫なのか?」


「あ、はい、まだつわりもなくて。ちょっと体調悪いなって思って晴明さんに診て頂いたら分かったんです」


「ふむ、それでお祖父様があの時来てたのか。今日は大丈夫そうか?」


「大丈夫ですよ、それより芙蓉ちゃんが心配…」


「私は大丈夫よ、緊張なんて吹き飛んだわ。柚葉の赤ちゃん…絶対可愛いわっ、暁と仲良くしてちょうだいね」


――空には瑞鳥の象徴である鳳凰が上空を旋回していた。

十六夜は縁側で煙管をくゆらせながらそれを見上げて、ばたばた近付いて来る足音に笑みを浮かべた。