宵の朔に-主さまの気まぐれ-

朔たちを出迎えた凶姫と柚葉は、嬉しさと恥ずかしさで足が浮ついたような気持ちになっていた。

身を清めた後、柚葉が仕立ててくれた白無垢に袖を通し、凶姫が首を傾げた。


「これ…こんなに身体にぴったりするものなの?」


「姫さ…芙蓉ちゃんは細くて身体の線がきれいだから、ちょっと絞ってみました。私のは普通の白無垢ですけど」


息吹と朧と山姫が手伝ってくれたためすんなりと着ることができて、続いて鏡台の前に座らされて髪を結い上げ、化粧をされている間にふたりは徐々に緊張が高まってくるのを感じていた。


「私たち…本当に祝言を挙げるのね…」


「そうですよ…こんなこと、想像もできなかったのに」


「ふふー、うちの朔ちゃんと輝ちゃんは女の子を見る目がありました!ふたりとも可愛くてきれいでお茶目なお嫁さんをお迎えすることができて、姑としてはとっても嬉しいよ」


そう喜んでくれるのは嬉しいものの――凶姫は緊張で手が冷たくなっていて、小刻みに震える手を見た柚葉は小さく笑って鏡台に映る自身の顔を見つめた。


「緊張してます?」


「そりゃしてるわよ。あなたはしてないの?」


「私は肝が据わりましたから大丈夫です。じゃあ芙蓉ちゃん、緊張が解れることを言ってあげましょうか?」


「それは是非そうしてほしいところだけれど…なあに?」


凶姫が黒や赤に変化する美しい目でじっと柚葉を見つめた。

息吹と朧の手も止まり、しばらく黙り込んでいると、まだ準備をしていない朔と輝夜と天満と雪男が部屋に入って来て妙な空気にふたりの艶姿を褒めるのも忘れて顔を見合わせた。


「どう…した?」


「鬼灯様、いいところに。ここに来て下さい」


「はいはい、お待ち下さい」


輝夜が柚葉の隣に腰を下ろすと――


柚葉は自身の腹に手をあてて、微笑んだ。


「私…赤ちゃんができました」


「……えっ!?」


柚葉と輝夜以外の皆が声を上げて固まった。

輝夜は柚葉の肩を抱いて、腹に手をあてて同じように微笑んだ。


「そういうことです。兄さん、うちの子も可愛がってあげて下さいね」


「え…えぇえーーーーっ!?」


大絶叫。

凶姫の緊張も一瞬で吹き飛んで、今だかつて上げたことのない大声で絶叫した。