その泣き声の声量たるや――耳を塞ぎたくなる程に大きく、床に寝かしつけてお乳を与えようとしたが一切飲まず、どんなにあやしても泣き止むこともなく、干からびてしまうのではと思うほどに涙を流して泣き叫ぶ。


――亡くなった天満の子が生まれ変わってきたのか?

そう思ってしまうほどにすでに天満との縁を結んでしまっている暁をぎゅうっと抱きしめた凶姫は、例え天満がどれだけ拒もうともせめてもう少し成長するまではここに居てもらえるように朔から説得してもらうことを考えていた。


「芙蓉さん…いいですか?」


「あ、はい」


障子を開けると唇を噛み締めた天満が立っていて、まだ泣いている暁の紅葉のような手をきゅっと握ると、ぴたりと泣き止んだ。


「…いいですか?」


「はい、お願いします」


天満が暁を抱っこすると落ち着いたようにして指を吸って泣き疲れて寝てしまい、さらに困惑。


「天満さん…あの…」


「…僕が後見人でいいですか?」


「え?」


驚く凶姫と一緒に居間に移動して火鉢の傍に座った天満は、暁の目尻に浮かぶ涙を指で拭ってやりながらその寝顔に見入った。


「僕は妻子を亡くしてずっと独りでした。だから感覚が麻痺してしまっていて寂しいなんて感じなかった。だけどこの子と会ってから寂しいばかりで…。朔兄はそんな僕を思いやってくれてここに居ろと言ってくれました。それが本心なら…僕をここに置いてもらってもいいですか?」


――またとない好機。

凶姫は身を乗り出して口下手なりに必死に言い募った。


「私からもお願いします天満さん。この子は何かを感じ取っているからあなたから離れないんです。あなたのお子さんの生まれ変わりだと言われても私は信じます。それほどあなたたちはなんていうか…変な話ですけど、親子に見えるから」


「…芙蓉さん…」


「この子の成長を傍で一緒に見守って下さい。女の子だからきっと危ない目に遭うこともあります。でもあなたが傍に居てくれたらきっとこの子、安心するから」


「…ふふ、輝兄を差し置いて僕が後見人だなんて。でも刀術は雪男から習って下さいね、僕は教え下手なので」


成立した。


朔が帰ってきたら、きっとものすごく喜んでくれるだろう。

それを想像するだけで嬉しくて楽しくて、ふたりで暁の寝顔を飽きもせずずっと見ていた。