宵の朔に-主さまの気まぐれ-

「お嬢さんから何も話がないのですが…兄さん、何か仕掛けたんじゃないんですか?」


「仕掛けたし、お前は気乗りしないのだろうが、ちょっと担がれてくれないか?」


「何をですか?」


百鬼夜行の最中、向かってくる敵をばさばさ斬り倒しつつ、背中を預けている輝夜にごにょごにょと作戦の内容を語ると、さすがに輝夜は手を止めて身を引いた。


「ええ…?兄さん、それはちょっと…」


「振りだけでいいから。柚葉が芙蓉に相談しているのは確かなんだ。お前にはなかなか言い出せないみたいだな」


「お嬢さんを騙すのは気乗りがしないですよ。この際私が直接‟嫁に来い”と言った方が早い気がします」


ばらばらと敵が逃亡していって刀を鞘に収めた朔と輝夜だったが、朔は少し夜空を見上げて顎に手を添えた。


「柚葉が頑張って頑張って、顔を赤らめてもじもじしながらお前に‟お嫁さんになりたい”って言ってる姿、見たくないのか?」


「見たいです。すごく可愛いです。兄さん、よろしくお願いします」


…即答。

かくして作戦は決行されることとなり、朔は密かに雪男と作戦について話を早急にまとめていた。

その間も柚葉は輝夜の傍に行っては口を開けたり閉じたりしていて、そんな姿も可愛いと兄と同じ位溺愛指向の強い輝夜はにこにこ。


「あの、鬼灯様…一緒に寝てもいいですか?」


「いいですとも。ちょっと今日は疲れているのでお嬢さんを抱くことはできませんが」


「一緒に寝るだけでいいんです。…失礼します」


――本当は毎日何度抱いても飽き足りないのだが、敢えて柚葉を焦らせて胸の中に転がり込んできた柚葉を抱きしめて、地顔が困り顔の柚葉の額をちょんと突いた。


「今日も何か言いたげですね」


「べ、別に…」


柚葉の気を引くために、我慢我慢。