宵の朔に-主さまの気まぐれ-

輝夜の部屋は屋敷の中でもかなり外れにあり、長い廊下を歩きながら一体自分はどう問い質すのか考えていた。

――輝夜は朔の言うことなら無条件に従う節がある。

絶対的に信頼しているからこそなのだろうが…嫁取り問題でも朔の薦める女をなんの抵抗もなく受け入れるつもりなのだろうか?


「やだ…鬼灯様が他の人となんて…」


もう身体はつらくなくなった。

着替える度に身体についた唇の痕が生々しくて鏡台に映る自身の身体に目を奪われていて恥ずかしくなるが――こんなことを他の女にしてほしくはない。


「鬼灯様…?失礼します…」


そっと声をかけて襖を開けると、輝夜はまた床も敷かずごろんと寝転んですやすや眠っていた。

足音を立てないよう心掛けて傍に正座した柚葉は、あどけない寝顔に終始夢中になって言葉を紡げなかった。

だが他者の気配に敏感な輝夜はすぐに目を開けて、寝ぼけ眼で柚葉を見つめて手を伸ばした。


「ああお嬢さん…寝てしまっていたのか…」


「そのままでいいですよ。私…その…別に用があったわけじゃないので…」


超がつく引っ込み思案の柚葉がまごまごしていると、輝夜は小さな欠伸をして脇をぽんぽんと叩いた。


「ちょうど抱き枕が欲しかったんです。なってくれますよね?」


「あの…はい…」


おずおずと近付いて脇に転がり込むとすぐ腕枕をしてくれた輝夜の息遣いを耳元で感じて縮こまった。

風呂上がりの石鹸の香りがふんわりとして顔を上げるとすぐ目が合い、言葉もなく見つめていると、輝夜に指摘された。


「何か話がありそうな顔をしていますね」


「いえ…別に何も…。ちょっと顔を見たかっただけですから」


「あなたの未来は見えずとも、あなたが悩んでいること位分かりますよ。さあ、言わないと悪戯しますよ。ほら…」


一度優しく唇が重なり、離れたと思ったら今度は舌を絡めて強く唇を塞がれて、帯に手がかかっているのが分かったが――


‟私以外の女を嫁にしないで”など図々しくてとても言えず、その間に輝夜がぽいっと帯を隅に放った。


「いいんですか?しますよ?」


「…だって言えないんです。私って我が儘…」


「お嬢さんの我が儘ならなんでも聞きますよ。ほら、早く言わないと…」


柚葉の唇から熱い吐息が漏れた。

すぐに何も考えられなくなって、輝夜の寵愛をその身に受けた。