宵の朔に-主さまの気まぐれ-

彼らが百鬼夜行に出て行くと、しばらく横になって体力が戻ってきた柚葉は胎動を感じた凶姫と喜び合った後、朧に報告をしに行った。


「輝夜兄様と!?おめでとう柚葉さんっ!私たちの知識、役に立ちました?」


「いえそれが全然で…。全て鬼灯様にお任せしちゃった感じで…」


「最初はそんなものですよ!私だって最初はお師匠様に任せっきりで…やだ何を言わせるんですか!」


…こちらはこちらで朔たちと同様に大盛り上がりで、屋敷の留守番役である雪男が付かず離れず傍に居るため、声を抑えて三人できゃっきゃと騒いでいた。


「で、その…鬼灯様に‟嫁になりたい”って言わせてみせる的なことを言われて…私、驚きすぎて返事ができなくて…」


朧と凶姫は顔を見合わせて、それぞれ柚葉の肩を叩いて力強く頷いた。


「嫁になっちゃいなさいよ」


「そうですよ、みんなで面白可笑しく暮らしましょうよ」


「で、でも!ちゃんとしたお付き合いがしたいんです!そ、そういう関係にはなっちゃったけど、夫婦になるのは早すぎると思うんです」


「柚葉、あなたったたら…なんていうか、鬼族にしては本当に純情よね」


「すみません…鬼灯様はゆっくり考えていいって言ってたので、ゆっくりでいいと思います?」


「輝夜兄様がそう言うのならそれでいいんじゃない?とりあえず私にも経緯を詳しく!」


――あの三人は非常に危うい話をしている…

彼女たちの表情からそれを察して近付かなかった雪男だったが、時折聞こえる‟輝夜”、‟抱かれた”という単語にまさかと思って文を握りしめたままにじり寄った。


「なあ、盗み聞きするようで悪いんだけど…輝夜とそういう関係になったのか?」


「ゆ、雪男さん!?聞かれちゃったんですね…?そうなんです。実はそういうことに…」


朔の言っていためでたい話というのは、これのことでもあるのか――


朔と凶姫は夫婦になることが確定していて、次は輝夜と柚葉が…?


「やっべえ、俺ちょっと泣きそう…」


育ての親と言っても過言ではない雪男が声を震わせると、朧はぎゅっとその細い身体に抱き着いて同じように目を潤ませた。


「本当におめでたい日なんです。お師匠様、みんなでお酒を飲みませんか?」


「ん、そうしよう」


月の輝く夜に、皆で酒を飲み交わした。