宵の朔に-主さまの気まぐれ-

輝夜は輝夜で朔に自室に引き込まれて逃れようのない笑顔の前で苦笑していた。


「何かあったのは分かっている。だから何があったのか話せ」


「兄さんの想像通りということでどうでしょう?」


「え?じゃあ柚葉を抱いたのか?」


「そういうことです。ありがたく頂戴致しました」


徐に立ち上がった朔は、百鬼夜行の前だというのに戸棚から酒を取り出してさらに輝かんばかりの笑顔で輝夜の隣にどっかり腰を下ろすと、盃を手に持たせた。


「それはめでたいことだ。詳細は語ってくれるんだろう?」


「ええ?私の思い出にしておきたいのですが」


「思い出ということは、もう柚葉を抱かないということか?よく考えろ」


――考えるまでもなく、もう抱かないという選択肢のない輝夜はぽろぽろっと経緯を話すと、朔の表情はみるみるにやけ顔になり、勢いよく酒を呷って楽しそうに声を上げて笑った。


「ははっ、我慢できなかったんだな。ま、柚葉は可愛いから仕方ないか」


「兄さんからお嬢さんを褒められるとなんだか複雑な気分ですがありがとうございます。自分では優しくしたつもりでしたが、ちょっと昂ってしまいまして…今頃疲れ果てているかも」


「いや、今頃芙蓉から洗いざらい訊かれているところだと思う。輝夜、今日は休んでもいいぞ」


「いえいえ、私は平気ですよ。兄さん、ところでお嬢さんにさりげなく求婚してみたのですが、ちょっと反応が微妙だったのでそれが不安というかなんというか」


気立てが良く穏やかで悩みなどなさそうな弟が不安を口にするなど滅多にないことで、兄としてはここは奮起してふたりの仲を取り持ってやるところだと自身の胸を叩いて輝夜の髪をくしゃくしゃかき混ぜた。


「任せろ。絶対悪いようにはしないから」


「あと、お嬢さんを引き留めることにも成功しました。私を褒めて下さい」


兄大好きな輝夜のおねだりに笑顔全開になった朔は、肩を抱いて盃になみなみと酒を注いでにやり。


「もっと褒めてやるから、もっと詳細を話せ」


あっちでもこっちでも、大盛り上がり。