宵の朔に-主さまの気まぐれ-

今まで感じたことのない痛みだった。

継続的に繰り返される痛みの中でも、幸せだと思った。

胸が小さいから見られるのが嫌だと駄々をこねて輝夜を拒否してきたのが馬鹿みたいに思えて、痛みで汗がにじむと輝夜は必ず長い指で汗を拭ってくれた。


「大丈夫ですか…?」


「大丈夫…です…。痛いけど…」


「徐々に痛みは引くそうです。私は痛いどころか…ええと…」


「男の人は平気なんですよね…。私は大丈夫。鬼灯様と…いいえ、輝夜様にこうしてもらえて、本当に嬉しい…」


――真名を呼ばれた途端輝夜もまた一気に鳥肌が立って身震いをして、獣のように荒ぶって噛みつくように柚葉の唇を奪った。


「私は意識的にお嬢さんの真名を呼ぶのを避けていました。きっと…こうして荒ぶることを知っていたから。あなたを傷つけてしまうのが怖かったんです」


静かに見下ろしてくる輝夜をようやく薄目で見ることができた柚葉は、輝夜も自分と同じように汗に濡れて何かに耐えているような表情をしているのを見て、自分がこうして痛がるから痛みが治まるまで待ってくれているのだと知って、首を振って輝夜の心臓の上に手を置いた。


「あなたになら何をされても大丈夫。もうそんなに痛くないから…だから…」


それは本当だった。

痛みは薄れてきて、輝夜が労わってくれるからこそ、自由に愛してほしいと思った。


「柚葉…あなたと出会わなかったら、私は私自身を騙しながら生きていたかもしれない。戻って来なかったかもしれない。欠けていたものを取り戻すことができなかったかもしれない。あなたには本当に感謝しています」


ざわざわと身体の内側から痛みではなく快感が押し寄せてきて、自分がどんな顔をしているのかと思うと恥ずかしくなって両手で顔を覆ったが、輝夜がどんな表情をしているのか気になって指の隙間から見てみた。


――きれいな唇が開いて目も潤んで、視線を外さずずっと見てくれている――

迫って来る爆発的な快感が怖くなって両手を伸ばすと、輝夜はすぐに柚葉を抱きしめて耳元で何度も名を呼んだ。


「柚葉…柚葉……!」


「輝夜様…!」


ふたり同時に真っ白な光に飲み込まれて、意識が薄らいだ。