宵の朔に-主さまの気まぐれ-

輝夜の唇が身体を這い、与えられる熱と快感の間ですぐに息が上がって泣きそうになった。

怖いと思うけれど、それは行為自体を怖いと思うのであって、輝夜のことは全然怖くはない。

時々様子を窺うように労りの眼差しで見つめてくる輝夜に頷きかけると、その指が唇が愛してくれて、もうしがみつくことしかできなくなっていた。


「あの…やっぱり…痛いんですよね…?」


「そうですね…なるべく痛くないようにしてあげたいですが…私も今いっぱいいっぱいなので加減ができるかどうか分かりません。善処します」


いつも飄々としていて余裕を感じる輝夜でもいっぱいいっぱいになることがあるのかと思うと少し気が楽になって、手を伸ばして少し緊張している輝夜の頬に触れた。


「大丈夫です。私…鬼灯様が好きですから。大好きですから…痛くても、あなたを怖くはありません」


――ゆっくりとやわらかい草の上に押し倒されて、ゆっくりと…帯が解かれて、ゆっくりと…身体が覆い被さってきた。

男の身体がこんなに重たいものなのだとはじめて知った柚葉は、全身をなぞる輝夜のやわらかい眼差しにまた手で身体を隠しそうになって、笑われた。


「この押し問答、あと何回すれば私に抱かれてくれるんですか?」


「だって…だって…みんなこんな恥ずかしい思いをしてるんですか…!?」


「そうですよ、何も身に着けず、全てを晒して心も晒して相対するのです。だからこそ、身も心もひとつとなれる。私はお嬢さん…あなたと身も心もひとつになりたい」


こんなに求められて、嬉しくないわけがない。

目に涙が浮かぶと、輝夜はそれを唇で吸い取って耳元で熱く低い声で囁いた。


「もう我慢できない。あなたを抱きます」


ぎゅっと目を閉じてこくんと頷くと、輝夜もまた濡れていた着物を脱いで青白い鬼火に照らされる柚葉をこれから抱くのかと思うと昂って、一度深呼吸をして――ゆっくり身体を重ねた。


柚葉の眉間に皺が寄り、痛みに耐えていた。

ゆっくりゆっくり――そう心掛けて、柚葉の指に指を絡めて握ると、強く握り返されて、紅潮する顔に頬に口付けをした。


「……柚葉…」


真名を呼ばれた柚葉の身体が大きく跳ねた。


心を込めて真名を呼ばれ、心を込めて身がひとつとなった瞬間だった。