宵の朔に-主さまの気まぐれ-

夕暮れが近付いて来て朔たちが百鬼夜行に出る時間が迫ってくると、凶姫は朔に引っ付いて離れなくなった。

昨晩一度見送っただけでも寂しい思いをしたのに――歴代の妻たちはよくこんな思いを耐えているなと全く共感できずに朔の腕に抱き着いていると、閉め切った部屋の中、ひょいと脇を抱えられて膝に乗せられた。


「また‟行くな”って言うつもり?」


「…行かないでとは言ってないわ。‟行くの?”って言ってるの」


「同じだと思うけど。俺もお前を置いていくのは忍びない。一緒に連れて行ければよかったのに」


「私が戦える女だったら良かったって言いたいの?人選を間違えたわね」


つんと顔を背けた短気で可愛らしい凶姫の頬にちゅっと口付けをすると明らかに動揺して照れて膝の上で縮こまった。


「…本当にお嫁さんにしてくれるの?」


「うん。子だけ産ませてはいさよならなんていう教育は受けてない。出会った時から嫁にしたいって思ってたし、我が儘し放題の坊ちゃんな俺は諦めるということをしたことがないからな」


膝を優しい手つきで撫でられて身体が疼いて潤んだ目で朔を見つめると、優しい笑みを浮かべて頭を胸に押し付けられた。


「百鬼夜行の前に疲れるようなことをさせるつもりか?」


「それもいいわね、あなたをへとへとにさせて今夜は病欠ということで休んだらいいじゃない」


「俺をへとへとに?何回…いや、何十回させるつもりなんだ?」


ひそりと耳元で囁かれてびくんと身体を揺らした凶姫は、もう求めずにはいられなくなって朔の胸元にするりと手を滑り込ませて熱い吐息を漏らした。


「お願い、朔…」


「朝もしたのに?おねだりも上手だな、この気まぐれ猫は」


輝夜と柚葉のことも気になるが、自分の使命はこの男を永遠に自分に惹きつけておくこと。

複数の妻を持つことができるが、口ではそれでもいいと言ったものの――やはりそれは我慢できない。


「あなたを永遠に私だけのものにしてみせる」


「俺も同じこと考えてた。求められたら全力で応えないとな。芙蓉、弱音を吐くなよ」


夕暮れが迫って来る。

ぎりぎりまで求めて求められて、甘美な時を追い求めた。