宵の朔に-主さまの気まぐれ-

予想通り、輝夜は悪目立ちした。

日中に妖が往来を大手を振って歩くなど、それだけで強い妖だと分かるのに、男か女か一瞬見紛う中性的な美貌に絶えない微笑――

この都でそのような美貌であれば、百鬼夜行の主関連の者だとすぐに分かる。

だが輝夜の場合はほとんど幽玄町に居ることがなかったためその素性を知る者は平安町には居らず、人々はさざ波のように道を譲って遠巻きに見ていた。


「鬼灯様と歩くと道が空いてていいですね」


「ははは、よく言われます。で、次は長持と箪笥と火鉢…火鉢ですか?」


「はい、これから寒くなるじゃないですか。絶対必要になりますから」


「ちょっとお待ちなさい、今冬から住むつもりなんですか?」


「もちろんそうですけど?ああ、あった!」


店内に入ってしまった柚葉の後を追いかけず立ち尽くした輝夜は、今すぐにでも屋敷を出て行ってしまいそうな勢いの柚葉が傍から居なくなることに不安を抑えきれず、茫然としていた。


母との約束を律儀に守っている場合ではない――

少なくともどんどん膨らんでいく柚葉への想いに理性的であろうと四苦八苦しながら押さえ込んでいるのに…屋敷を出て行かれてはますます接点が無くなる。


のんびりしているわけにはいかない。

この可憐な人をひとりにしてしまうと、邪な思いを持った男たちに狙われてしまうかもしれない。


「鬼灯様ー、これ、橋の所まで運んでもらったら赤鬼さんたちが屋敷まで持って行ってくれるんですよね?」


「え?ああ…そう…ですね」


「鬼灯様のおかげで大体の物を揃えることができそうです。ありがとうございます」


ぺこりと頭を下げた柚葉になんとか作り笑顔で対処した輝夜は、その後も買い物に付き合いつつ、必死にどう説得しようか考え続けてぼんやりして、何度も柚葉に怒られた。