宵の朔に-主さまの気まぐれ-

白雷は先祖の血が色濃く出ていて、真っ白な短い髪に真っ白な耳と尻尾と肌――とにかく真っ白づくめな活きのいい若者だ。

晴明や銀や焔が縁者であり、狐は増えるとよくいうが、こう考えると朔の周りは白狐だらけ。

しかも九尾とくれば彼らだけで無敵の編成部隊が組めるというものだが、朔はまだ白雷や氷輪を実戦に投入していない。


「話ってなにー?」


「お嬢さんのことですよ」


「あー、柚ちゃんのことー?」


親しげなその呼び名に輝夜の眉が上がり、ついでに朔の目も丸くなったため、白雷は微妙に殺気が滲む輝夜の前で思わず正座をした。


「柚ちゃん…とは?」


「そう呼んでいいって言ったからー。柚ちゃんがどうしたのー?俺なんにもしてないよー」


「ではそんなお前に教えておきましょう。私とお嬢さんは恋仲です。お前にその気がなければちょっかいをかけてくるのはやめ…」


「えー、でも柚ちゃん輝夜兄ちゃんと恋仲だったなんて一言も言ってなかったけどー」


「…なんですって?」


「柚ちゃん可愛いし、前から撫でてもらいたいって思ってたから俺、手伝いをしていっぱい撫でてもらうんだ。いっぱい毛づくろいしてもらうんだ!」




……ただ単にじゃれたいだけで、柚葉に気があるということではないらしい。

だが柚葉が自分と恋仲であることを宣言しないのは、少々腹が立つ。


「白雷、ふたりは今大切な時なんだ。だからしばらくはそっとしておいてやれ」


「えー、分かったー」


残念がる白雷だが素直に応じると、矢のように待っていた氷輪に向かっていてまたじゃれ始めた。


「ひとまず恋敵じゃないと分かって良かったな」


「いいえ、良くありません。一体何を考えているんだか」


お前も柚葉にそう思われてるんだけど、と内心思いつつ黙っていた朔は、弟のやきもきする様子に笑みが止まらなかった。