宵の朔に-主さまの気まぐれ-

「ふふ」


縁側に座って洗濯物を干している柚葉を所在気なく見ている輝夜の背中を見ていた朔が含み笑いをすると、凶姫は袖をつんと引いてそれを咎めた。


「ちょっと。笑うなんて失礼じゃない」


「いや、輝夜と色々話したんだけど、輝夜は元々未来を予見する力は生まれ持っていたから、以前よりはっきり見えなくなっただけでちょっと先のことは見えるらしいんだ。でもやっぱり自分のことになると全然見えないらしくて。ああして自分のことを考える機会なんてあいつにはなかったから、なんか面白くて」


両想いになったものの、自らは息吹と約束したことが制約になり、柚葉はそれを了承しつつほとほと呆れているという感じだろうか。

ある意味ふたりとも恋仲ができたのははじめてのことで、互いにまだどうすればいいのか分からないように見えた。


「あの、主さま」


「ん、なに?」


縁側に寄って来た柚葉は、すぐ傍らで輝夜が見上げてきているのにまるで視線を合わさずもじもじしながら朔に頭を下げた。


「お店の改築の件なんですけど、お言葉に甘えてもいいですか?あの、でもちゃんとお金はお返ししますから」


「うん、任せてもらえると助かる。柚葉の好きなように改装させるから、見取り図はある?」


「はい!取って来ますね」


「柚葉、私も一緒に行くわ」


ふたりが手を取り合って居間を出て行くと、輝夜は肩を竦めて中性的な美貌に儚い笑みを浮かべた。


「存在を否定されている気分なんですが」


「俺もああして否定されたことあるから。お前は白雷をどうにかした方がいいんじゃないか?」


その白雷は氷輪と一緒に庭を掃きつつ箒で打ち合って遊んでいて、立ち上がった輝夜は手招きして白雷を呼び寄せた。


「話があるからちょっと来なさい」


「はーい」


恋敵なのかどうか、確かめなければ。