宵の朔に-主さまの気まぐれ-

染色を手伝ってくれたので、白雷のおねだりを叶えるためと自分の願望もあり、柚葉は櫛で長い毛を梳いてやった後、尻尾を優しく撫でたり頭の左右に生えているふかふかの耳を撫でて、さらに耳かきを手に笑ってみせた。


「ついでに耳のお掃除もしてあげますよ」


「やったー!」


素早く寝転んで柚葉の膝枕にあやかった白雷の尻尾が嬉しさのあまりぶんぶん振り回されていて、こういった感情が隠せないのも可愛いなと思い、耳かきをしてやりながら感情の見えない輝夜を心の中で詰っていた。


「なあ、柚ちゃんは輝夜兄ちゃんの嫁さんになるのー?」


「え…いえ、まだそんな…全然ですよ。全然そんなわけないですよ。全然違いますから」


――そんな二人の会話を廊下の柱にもたれ掛かって盗み聞きしていた輝夜は、‟全然”を連発する柚葉にもやもやしていた。


「そうなんだー?てっきりそうなんだと思い込んでたけど違うのかー。そっかー」


膝にすりすり頬ずりをされて、なんだか童扱いをしてしまっているが、白雷は立派な男。

今更ながらにそれに気付いて手が止まっていると、白雷は金色の目を瞬かせて催促してきた。


「もっと。もっとー」


「え、ええと…あ、そうだ、私やることがあるんでした!はい白雷さんこれ。後は自分でやって下さいね」


「えー?じゃあまた今度なー」


残念がる白雷を置いて庭に下りた柚葉は、少しどきどきして胸を押さえながら足早に庭を突っ切って自室に向かっていた。


「やだ…なんかどきどきしちゃった…」


元々、男と接するのは慣れていない。

引っ込み思案だった自分がああして普通に男と会話できること自体奇跡だったのだが、それは――輝夜のおかげでもあるのだ。

輝夜と長い間接していて、男に恐怖感をあまり感じなくなった。


「…鬼灯様の馬鹿」


自室の前にある庭で布団を干していた柚葉は、それを取り込んで陽の匂いを嗅いでいるうちに眠たくなり、こてんと横になると、うとうとしてしまった。


「誰が馬鹿ですって?」


髪に触れる誰かの手――

目を開けたいが眠気には勝てず、すやすや。