宵の朔に-主さまの気まぐれ-

輝夜の異変の理由は結局まだ分かっていなかったのだが、きっと今頃凶姫は朔から聞き出しているはずだ。

輝夜とふたりで自室に戻ることが当然になっていた柚葉は、小物類を隅に押しやって座る場所を作って前のめりになって正座した。


「姫様遅いですね。そろそろ息吹さんたちが帰っちゃうのに」


「しばらく部屋から出て来ないでしょうね。今頃お楽しみのはずですから」


――お楽しみの意味が分からずしばらく考え込んだ柚葉だったが…

朧と凶姫にどこからから調達してきた春画を見せられてこんなことやあんなことをされると具体的に実体験を交えながら話を聞かされた柚葉は、湯気が出そうなほど顔を真っ赤にして座布団で顔を隠した。


「お嬢さん?どうしました?」


「お、お楽しみって…その……」


「夫婦になるのですから、当然あれですよ、あれ。まだ分かりませんか?ありていに言えば、子作り。もっと分かりやすく言えば、情事…」


「わ、分かりますから、もうそれで!」


「おや、お嬢さんにしては理解が早かったですね。どこかの誰からか何か教え込まれましたか?」


「…鬼灯様…未来が見える力って奪われてないんじゃありません?なんで分かるんですか?」


「ははは、お嬢さんが分かりやすすぎるんですよ」


無邪気に笑った輝夜の笑顔が可愛らしくて、きゅんとした柚葉は――試しに隣に座っている輝夜の大きな手に触れてみようと思って手を伸ばした。

…が、その大きな手はさっと引っ込められて、ああやっぱり避けられているんだと痛感した柚葉は、すっと立ち上がって庭に通じる障子を開けると、縁側に立った。


「お嬢さん?」


「いい天気ですね。私、反物を染色してきます」


「私も手伝いますよ、一緒に行…」


「いえ結構です。鬼灯様はその辺にあるもので何か小物でも作って下さい」


素っ気なくされてやや唖然とした輝夜はその場にひとり置いていかれて指で頬をかいた。


「冷たいなあ…」


自分のせいだとまた気付かず、鈍感爆発。