宵の朔に-主さまの気まぐれ-

脱がされても覆い被さられても、凶姫のささやかな抵抗は続いていた。

腕を交差して胸を隠し、足をよじってなるべく見られないようにする――そうしていると、朔の緩やかな目元がさらにふっと緩んで可愛らしく小首を傾げて見せた。


「そんなことされてももう数えきれないほど見てるんだけど」


「そうだとしても…あなたを視覚で感じることができるようになったんだから恥ずかしいわよ…」


「俺が見えるようになったから?それは目でも感じることができるようになったからか」


妙に納得した風で頷いた朔に恥ずかしさが抑えきれない凶姫は、腹に圧がかからないようにしてくれている朔の息遣いも明確に聞こえる距離にある美貌を潤んだ目で見つめた。

目が見えない時よりも、今の方が遥かに欲情してしまう――

朔の露わになった身体や常に目が合う優しい表情に、もう心臓は爆発寸前だった。


「朔…ちょっと…ちょっと待って…」


「待たない。待っていたらいつまでもそうやって避け続けるつもりだろう?そんなんで夫婦になれると思ってるの?それとももう俺に抱かれるのがいやだとか?」


「!それは…それは違うわ。そうじゃないのよ。あなたに…見られてるのがもう恥ずかしくてたまらないの。お腹も大きくなってきたし…」


「きれいだよ」


芙蓉、と耳元で心を込めて真名を呼ばれて、もうどうでもよくなった。

こうして避け続けていても意味のないことだと分かっているし、そうすることで朔に不安を与えたりましてや呆れられたり嫌われるのは本末転倒。


「大丈夫だから…俺に身を委ねて」


「…ええ。あなたの好きなようにして…朔」


――ゆっくり重なる身体がすぐに熱を与えて快感が怒涛のように押し寄せてきて、何度も指を噛んで声を上げるのを耐えていた。

だがそうする度に朔は緩急をつけて攻めてきて、ふっと笑われた。


「まだ無駄な抵抗してるけど、それも燃える」


「朔…私、目が見えるようになってはじめて男に抱かれたのよ。‟渡り”の時はずっと目を閉じていたから数には入ってないの。だから…私にとってあなたがはじめての男。そして…最後の男」


「それは名誉だな。俺にとってもお前は最後の女だ」


「…はじめての女じゃないけれど」


「お前まさか一生俺を強請るつもり?まあそれもいいか、燃えるし」


「結局燃えるのね」


こつんと額をぶつけ合って笑い合い、唇を重ねた。