宵の朔に-主さまの気まぐれ-

「これがこうなって…こうでしょう?」


「きゃ…きゃーーーっ!」


「それでこうなって…こうなるんですよ。分かりました?」


「きゃあーーっ!も、もういいです!大丈夫です分かりましたから!」


「いいえ!こんなの序の口よ柚葉!ちゃんとこれを見て聞きなさい!」


「きゃーーーーーっ!」




……柚葉の自室から聞こえる絶叫にさすがに雪男は女三人で一体何をやっているのか廊下をうろうろしながら声をかけた。


「お、おい…大丈夫か?」


「雪男さん!?男子は駄目って言ったでしょう!?」


「そう言われても…。朧!お前一体なにを…」


「お師匠様、これは女の戦いなんです。あっち行ってて!」


冷たくあしらわれてすごすご居間に戻った雪男は、長男の氷輪がごろんと寝転がりながら大あくびをしているのを見て隣に座った。


「お前の母ちゃんがなんか訳わかんねえことやってるぞ」


「知らない。怒られてもいいなら乱入すれば?」


氷輪にもつれなくされて同じ真っ青な髪をわしゃわしゃかき混ぜて撫で回していると――朧が戻って来た。

その表情が達成感に満ち満ち溢れていて、思わず怪訝な表情になった雪男に朧、にっこり。


「ふう、終わりました」


「一体なにが終わってどうなったのか説明してほしいんだけど」


「来るべき時のために私と芙蓉さんが教鞭をとっただけですよ。でも刺激が強かったのか柚葉さん卒倒しちゃって。まだまだ教えたかったのに」


「いやあの…柚葉は繊細だから過激なことすんなよ?」


「はい、後は柚葉さん次第ですからね。輪ちゃん、お煎餅食べる?」


こくんと頷いた氷輪と三人で煎餅をかじっていると、そこに凶姫が合流。

こちらも達成感に満ち満ち溢れていて――


「あの子、教え甲斐があるけれど…まだまだね」


「……」


よく分からないが可哀想に、と柚葉に同情しつつ、これ以上庇い立てすると自分の身が危うくなるのを感じた雪男は聞いてないふりをしてまた煎餅にかじりついた。