宵の朔に-主さまの気まぐれ-

表情を引き締めた朔が凶姫を伴って居間に通じる縁側に出ると、集まっていた百鬼たちがわっと声を上げた。

半数以上は先代の十六夜時代から百鬼だったが、先代は有無を言わさず皆を引っ張るやり方で、朔は皆と共に心をひとつにして戦うやり方で、朔のやり方を心地いいと思う者が多く、勇ましい声を上げて称えてくれるくれる彼らに手を振った。


「まあ落ち着け。百鬼夜行はまだ始まってないんだぞ」


「ですが主さま!先代は怖くて怖くて…みんなちびりそうだったんですぜ!」


「父様は今もお強かっただろう?俺もあんな風になりたいんだ。どうやったらなれると思う?」


「ならないで下さい!主さまは主さまのままで!」


皆に相談を持ち掛けてそれをあっさり否定されてどっと笑い声が上がると、背後からのんびりした声が聞こえた。


「兄さんが父様みたいになったら、それはそれで陶酔する者が多く現れるのでは?」




……百鬼たちの目が一斉に輝夜に集まり、皆が一斉にきょとんとした。

それもこれも輝夜の象徴である長い髪はばっさり切られていてしかも顔を晒していたため、女の百鬼たちが堰を切ったかのように悲鳴や金切り声を上げた。


「あれは鬼灯の君か!?こう見ると主さまによく似ているような…」


「鬼灯様!?素敵!!」


「ははは、まあまあ皆さん落ち着いて。今夜から私と兄さんは百鬼夜行を再開します。ちなみに私は色々目途がついたので、今日といわず明日も明後日もこれからもずっと参加しますからね。よろしくお願いしますね」


――再びどっと歓声が沸き、凶姫は肩を竦めて朔の袖をずっと握りながらその横顔を見ていた。

嬉しさに溢れて、戦うことに喜びを感じて、その勇ましい横顔は朔の雄の表情だった。


「朔…気を付けてね。怪我したり死んだりしないで」


「死なないし、怪我なんてひとつもする気がしない。何せ輝夜が一緒なんだ。それと、俺の百鬼たちも」


「そうだぜ!主さまに指一本触れさせるか!」


「そうだそうだ!」


「分かった分かった。行くぞ!お前たち!」


「おう!」


輝夜の肩を叩いて笑い合った兄弟が空を駆け上がってゆく。

満天の星空を、駆け上がってゆく――