宵の朔に-主さまの気まぐれ-

事情を聞いた朔は、腕を組んで天井を見ながら考え込んでいた。

この前まで朔に恋をしていた柚葉は、もう恋愛感情は抱いてはいないのだが美しすぎる男が悩む姿もおつだな、と心の中で拝みながらじっと朔を見ていた。


「あなた夜通し輝夜さんと話したんでしょう?何か聞いてない?」


「んん、輝夜が今まで話せなかったこととか聞いててそれで朝が来てしまった感じだから聞いてない」


「そう。ちょっと探りを入れて来てくれる?絶対おかしいんだから」


「健全な付き合いを、ということなのであれば、輝夜の性格上それをきっちり守ってるんじゃないかと俺は思う。柚葉の気持ちを優先したいんじゃないかな」


「それは…極端すぎない?全然触らないとかあり得る?」


「輝夜ならあり得る」


弟を知り尽くしている朔の断言に柚葉と凶姫は顔を見合わせた。

そう約束させてしまった柚葉としては、もう口付けも交わした仲なのだからせめてそこまでは普通にしてもらいたいと思っていたが、あの男――どうやら真面目すぎるらしい。


「鬼灯様はいつも飄々としてる感じですけど…。胸元もいつも緩んでるし…」


「飄々としてるっていうかのんびり屋なんだ。あまり外見を気にしないし。とりあえず百鬼夜行に出たら探りを入れてみるから」


百鬼夜行の準備のため朔はふたりと別れた後、縁側で大量の文を読んでいた雪男に声をかけた。


「輝夜の様子がおかしいらしいんだが、知ってるか?」


「いや、何も。おかしいって何が?」


「知らないならいい」


輝夜と柚葉が夫婦になれたらどんなに喜ばしいことだろうか――

そのためにまた朔もなんでもする覚悟で百鬼夜行の準備を進めた。