宵の朔に-主さまの気まぐれ-

「鬼灯様。今夜から百鬼夜行に参加されるんですよね?」


「ええ、兄さんの傍で共に駆けるために戻って来たのですから」


「そうですか、分かりました」


すっと立ち上がった柚葉を見上げた輝夜は、麗しい目元に笑みを履いて口角を上げた。


「今私はなんの確認をされたのでしょうか?」


「いいえ別に?私ちょっと姫様のところに行ってきますね」


「はい。ああお嬢さん、ここに住む住まないの話は焦らなくてもいいですからね。前向きに考えて頂けると助かります」


頭を下げた柚葉は自室を後にして、調査のため凶姫の部屋に行ってひょこっと顔を出した。

凶姫はその時なにやら本を真剣に熟読していて、朔とふたり揃って本の虫なことを知っている柚葉は声をかけず去ろうとしたのだが、見つかってしまった。


「柚葉?入って来なさいよ、どうしたの?」


「ちょっとだけお時間いいですか?あの、鬼灯様のことなんですけど」


かくかくしかじか。

圧倒的に恋愛の経験値不足な柚葉がしどろもどろになりつつも輝夜の様子がおかしいことを伝えると、凶姫はぱたんと本を閉じて美しい柳眉を細めた。


「それはおかしいわね。輝夜さんのことだから速攻であなたを襲うと思っていたけれど」


「ほ、鬼灯様はそんなことしませんよ。ちゃんと手から繋ぐお付き合いをするって約束してくれましたし…。でもその手すら繋いでこないのでどうしてかなって…」


今更手の平を返すようなまねをしている輝夜の異変は凶姫にも分からずふたりで唸っていると、そこに朔が団子の差し入れをしに現れた。


「ああここに居たのか。これ、母様から」


「朔。ちょっと来て」


有無を言わさず凶姫が朔の腕を掴んで部屋に引きずり込むと、にっこり。


「結界を張ってもらえる?ちょっと内緒の話をしましょうよ」


「う…ん?」


女ふたりの圧力に、しどろもどろ。