息吹から‟祝言を迎えるまで手は出さないように”と釘を刺された形になっている輝夜は、馬鹿正直にそれを遂行していた。
元々からして繊細で生真面目な性格のため、言われたことは筋を通して守る。
耐えがたい誘惑が目の前にあっても鋼の精神でそれをねじ伏せることができ、理性的であって妥協はしない。
そのため、今まで柚葉にべたべた接していた輝夜だったがそれを一切せず黙々と刺繍を縫っていた。
「あの…鬼灯様?」
「はい?」
「どうか…しました?なんか様子が違いますけど」
顔を上げた輝夜はきょとんとしていて、明らかにいつもと様子が違うのにそれがなんだか分からず戸惑う柚葉だったが、逆に輝夜がそれを察して手を止めた。
「私はいつも通りですけど、お嬢さんこそどうしました?」
「あ、いえ、気のせいならいいんですけど…」
――そこでようやく気付いた。
そういえば…昨晩から今日にかけて、輝夜は全く触れてきていない。
昨日欠けていたものを得てからいつも以上にべたべた触られていたのに、今日は全くだ。
触られること自体緊張するし意識してしまう――
だが輝夜に触れられていると、妙な安心感を同時に得るのも確かであって…
「昨晩…何かありました?」
「え?昨晩は兄さんと夜通し語らい合って素敵なものになりましたが。ふふふ」
兄を溺愛する弟の含み笑いに、ああいつもの輝夜だと思い直した柚葉が笑うと、そのふわふわの髪に糸くずがついているのを見つけた輝夜がふっと笑って手を伸ばした。
「お嬢さん、可愛らしいくせっ毛に糸くずが…」
‟なんにもしちゃ駄目だよ”
息吹の言葉が蘇った輝夜の手が止まる。
急に手を止めた輝夜を不審に思いながら自分で髪についた糸くずを取ると、ようやくその手を下ろして膝の上の反物に再び目を落とした。
やっぱり何かがおかしい――
柚葉は調査に乗り出した。
元々からして繊細で生真面目な性格のため、言われたことは筋を通して守る。
耐えがたい誘惑が目の前にあっても鋼の精神でそれをねじ伏せることができ、理性的であって妥協はしない。
そのため、今まで柚葉にべたべた接していた輝夜だったがそれを一切せず黙々と刺繍を縫っていた。
「あの…鬼灯様?」
「はい?」
「どうか…しました?なんか様子が違いますけど」
顔を上げた輝夜はきょとんとしていて、明らかにいつもと様子が違うのにそれがなんだか分からず戸惑う柚葉だったが、逆に輝夜がそれを察して手を止めた。
「私はいつも通りですけど、お嬢さんこそどうしました?」
「あ、いえ、気のせいならいいんですけど…」
――そこでようやく気付いた。
そういえば…昨晩から今日にかけて、輝夜は全く触れてきていない。
昨日欠けていたものを得てからいつも以上にべたべた触られていたのに、今日は全くだ。
触られること自体緊張するし意識してしまう――
だが輝夜に触れられていると、妙な安心感を同時に得るのも確かであって…
「昨晩…何かありました?」
「え?昨晩は兄さんと夜通し語らい合って素敵なものになりましたが。ふふふ」
兄を溺愛する弟の含み笑いに、ああいつもの輝夜だと思い直した柚葉が笑うと、そのふわふわの髪に糸くずがついているのを見つけた輝夜がふっと笑って手を伸ばした。
「お嬢さん、可愛らしいくせっ毛に糸くずが…」
‟なんにもしちゃ駄目だよ”
息吹の言葉が蘇った輝夜の手が止まる。
急に手を止めた輝夜を不審に思いながら自分で髪についた糸くずを取ると、ようやくその手を下ろして膝の上の反物に再び目を落とした。
やっぱり何かがおかしい――
柚葉は調査に乗り出した。

