宵の朔に-主さまの気まぐれ-

あれだけ朔を避けていたというのに、凶姫は一抹の不安を覚えてべったり離れなくなった。

…確かに先代は朔の代行として夕暮れ出かけて行き、戻って来るのは明け方。

その後一緒に朝餉を食べたり風呂に入って、ようやく寝るのだが…起きてくるのは大抵夕暮れ直前で、確かにあまり顔を合わせることもなければ話す機会にも恵まれなかった。


――朔ともそんな生活になってしまうのだろうか?

それはあまりにも…あまりにも寂しすぎる。


「さっきからどうしたの、俺は別にいいんだけど」


「…いいえ、なんでもないわ。早く帰りましょう。私…頑張ってご飯を作るから」


「ちらっと見たけど包丁の持ち方がなってなかったけどあまりしたことないんじゃ?まあ俺たちは元々人の食事なんてしないからできないのは当然か」


「努力するわ。家庭の味というのも息吹さんに教えてもらうわ。…私、頑張らなきゃ」


急に奮起した凶姫の肩を抱いてそれを不思議に思いながら屋敷に帰った朔は、数人の力の強い百鬼が黄泉たちの躯を取り囲んでいるのを見てすうっと目を細めた。


「何もしてないだろうな?」


「してませんけど、こいつが主さまたちを苦しめたんですね?何故墓地に埋葬なんて…打ち捨ててしまえばいいのに」


「人の道理に則って埋葬する。お祖父様が着いたら呼んでくれ」


頭を下げた百鬼たちにもう一度一瞥して庭側から居間に上がった朔は、ずっと俯いている凶姫を自室に連れて行って座らせると、頭を撫でた。


「どうしたの。具合が悪くなった?」


「……あなたってこれから毎日あんまりここに居なくなるのよね?」


「まあそれがうちの家業だから。それがどうしたの」


「…あんまり会えなくなるの?」


――そこでぴんときた朔は、凶姫を正面からむぎゅっと抱きしめて背中を撫でた。


「そんなことはない。夜は居ないけど日中は居るし」


「……でも…寂しいわ…」


まだ始まってもいないのに寂しがる凶姫にきゅん。