宵の朔に-主さまの気まぐれ-

翌朝つわりもなく体調も万全で、一応診に来てくれた晴明に検診してもらって太鼓判を押された凶姫は、鏡台の前で久しぶりに自分の顔を見ていた。


「私…おかしくない?お化粧なんて久しぶりに自分でしたから」


「姫様は地顔が派手ですから薄化粧でいいんです。今日は楽しんで来て下さいね」


「地顔が派手なんて失礼ねっ。でも楽しんでくるわ。お土産も買ってくるから」


着替えも済ませて朔の部屋に行くと、濃紺の着物に白い帯を着用して部屋から出ようとした朔と遭遇して見上げた。


「お、おはよう…」


「おはよう。なんだそれ、よく似合ってる」


着替えを用意してくれたのは柚葉で、鮮やかな牡丹の花が刺繍された橙の着物姿でとても華やかなもので、凶姫はどぎまぎしながらくるりと回って見せた。


「派手じゃないかしら?」


「顔が派手だから何を着ても派手だと思う」


「柚葉と同じようなことを言うのねっ。晴明さんに出かけてもいいって言われたから連れて行って」


「うん。転ばないように気を付けて」


玄関で下駄を履いている傍からよろめいて朔に慌てて支えられると、凶姫も慌てながら言い訳を始めた。


「目が見えるようになってから気が散漫になっちゃって…気を付けるわ」


「信用できない。だから手を繋いでいく」


「!いやよ駄目!それは…恥ずかしいから!」


「じゃあ連れて行かない」


攻防戦の末勝利したのは朔で、見送りに出て来た息吹は本当に朔にお使いをさせるようで、紙を手渡していた。


「じゃあ朔ちゃん、これお願いね」


「はい。行こう」


玄関を出ると、外を履いていた輝夜に手を振られてふたりで振り返した。


「兄さん、お嬢さんの店も見に行くんでしたよね?隣の反物屋の主人が持ち主なのでよろしくお願いします」


「ん、分かった」


みんなして、過保護。

凶姫の手をしっかり握って、いざ出発。