宵の朔に-主さまの気まぐれ-

柚葉の部屋は物が散乱していて手狭なため、凶姫の部屋で床をふたつ敷いてくっつけてふたりでにこにこしながらはしゃいでいた。


「今日は本当に色々あったわね。柚葉…私ちゃんとあなたに言ってなかったから言わせてくれる?」


「え?何をですか?」


床の上にちょこんと正座した凶姫は、深々と頭を下げて震える声でそれを口にした。


「柚葉、ありがとう。あなたが私を黄泉の手から救ってくれなかったら私、どうなっていたか…」


ああ、と小さく呟いた柚葉は、小刻みに震えている凶姫の手をそっと両手で包み込んで首を振った。


「私、なんでか姫様のことになると咄嗟に身体が動いちゃうんです。…黄泉さんにも色々あって、私少し同情しかけてました。でもそこに鬼灯様が来てくれて…私、見せてもらっていた姫様の目を持っていたから、それが幸いでした」


刻々と黒や赤に変化する凶姫の目は美しく、きれいなものや美しいものが大好きな柚葉は顔を上げた凶姫のその目に顔を輝かせながら見入った。


「取り戻せて良かったですね、姫様。鬼灯様も欠けていたものが戻って来たし、ただ主さまが傷だらけだから私明日治療をしてあげようと思ってますけどいいですか?」


「ええお願いね。私まだ物がぼやけて見えるんだけれど、徐々に良くなっていくわよね?」


「もちろんですよ。色の強い野菜を沢山食べてしばらくは養生して下さいね」


布団の上にふたりで寝転んで、それぞれの男のことを思った。

凶姫は朔を意識しすぎて避けてしまい、柚葉は輝夜との約束を先延ばしすることができて若干安心していたが…なかなか押しの強い男のため油断はできない。


「あ、あの姫様…鬼灯様のことなんですけど…」


「ええ、なあに?」


話の内容は分かってはいたが、一応相槌を打ってみる。


「私…鬼灯様とその……お付き合いすることになりましたっ!」




……


「本当に!?すごいじゃない柚葉!両想いになれたのね!素敵!」


――様式美。