食卓の上はものすごいことになっていた。

元々大所帯なため大量の料理を作ること自体息吹は苦ではなく、しかし凶姫の目が見えるようになったり、輝夜が救済の旅を終えてここに居住することも含めてとても喜んでいて、ちゃんと雪男用に冷やしたものも作っていたりで朔たちは目を丸くしていた。


「母様…すごいですね」


「本当は如ちゃんたちも呼びたかったんだけど…」


「!いやそれは!息吹、今日はみんな疲れてるだろうしまたの機会にしよう。な?」


雪男が怯えた声でなんとか息吹を宥めると、凶姫は朔が隣をぽんぽんと叩いたためそこに座らずを得ず、また柚葉も隣をぽんぽんされて輝夜の隣に落ち着きなく座った。


「父様はもうすぐ帰って来るから」


「でもまだ夜が更けたばかりですよ」


「途中から銀さんに任せるって言ってたよ。もう嬉しくて多分身が入らないんだと思うな」


くすくす笑う息吹に皆がほっこり。

柚葉もにこにこしていて、やはりこの二人は似ているなあと兄弟が思っている中、凶姫は皆の視線が自分に集まっていることにはにかんだ。


「…やっぱり気味が悪いのかしら」


「何が?」


「この目が。うちの家系でこんな目をしていたのは私だけだから。何か特別な力があるというわけでもないんだけれど…そうよね、気味悪いわよね」


ちょっとしゅんとした凶姫の言葉に、息吹がきょとん。


「それは違うよ姫ちゃん」


「え?」


「みんなね、姫ちゃんの目を近くで見たいんだよ。もう本当は両手で顔を挟んでじっくり見たいの。だって…すっごくきれいだもん!」


絶賛も絶賛の大絶賛。

恥ずかしくなって俯いていると、朔は頭を撫でてやりながら酒を口に運んだ。


「せっかく目が見えるようになったんだから、明日町に連れて行ってやろうと思ってます」


「いいんじゃない?朔ちゃんついでにお買い物してきてくれる?」


――百鬼夜行の主にお使いを頼む母。

朔が笑いながら頷くと、凶姫は朔の袖を引っ張って目を輝かせた。


「い、いいの?」


「うん。ちょっと目立つと思うけどそれでいいなら」


「行く!絶対行くわ!」


うきうき。

絶対体調を整えてやる、と意気込んで息吹の手料理に舌鼓を打った。