…しこたま叱られた。

着物の袖を握ってぶんぶん振り回されて、がくがく揺らされながらとりあえず謝った。


「実際俺は柚葉に手を出してないし恋愛感情は抱いてな……ごめんなさい」


「世の中の男たちが柚葉みたいな可愛い娘が好きなんだってことは私だって分かってるわよ。ええそうですよ、純情そうで可憐で可愛くて私が男だったら襲ってやりたい位可愛いものね!」


「確かに柚葉は可愛いけど、俺はお前の方が可愛い」


真顔で言ってのけた朔にかっと顔が赤くなった凶姫は、朔の肩を思い切りばしっと叩いた。


「いたた」


「そうやって褒めて丸め込もうとしたって駄目よ通用しないんだから。あなた第一私のことなんて可愛いと思ってないくせに」


「見た目は妖艶だけど中身は可愛いし、俺はその二面性にやられてるってことをどうやったら分かってもらえる?」


「っ!ま…真顔で言わないでよね!」


「言わせてもらうけど、俺はお前が子を孕むまでとことん抱くつもりだった。絶対お前との子が欲しかったし、他の男にくれてやるつもりもなかったんだ。俺としては、お前を輝夜と奪い合う羽目にならなくて良かったと思ってる」


にこっと笑った朔に唖然とした凶姫は、血圧が急上昇して顔から火が出るほど熱くなると、先ほどの勢いが急に萎んで身体を丸くして顔を隠した。


「やめて!恥ずかしいでしょ!?」


「弟が恋敵になるなんて絶対嫌だったから、牽制に牽制を重ねた結果がこれだ。まあでもあいつは元々からして柚葉を意識してた感じだったけど」


誰も見ていないのをいいことに凶姫の脇をひょいっと抱えて自分の膝に移動させた朔は、咄嗟に両手で顔を隠してまだ恥ずかしがっている姿に萌えながら頭に顎を乗せた。


「改めて訊くけど…俺と夫婦になってもらえる?」


「……」


「どうしても夫婦になりたいんだけど、なってもらえる?」


「………ええ」


「え、なに?もっと大きな声で言って」


「なります!あなたのお嫁さんに!なります!」


粘り勝ち。