側近たちは側近たちだけで凶姫に関して意見を交えた。

思った以上に朔が肩入れしているため――またふたりを見た感じからしても、朔にとって大切な女になるのではないかと話し合い、雪男が代表してそれをじわりと朔に問うてみる。


「あのさ、凶姫のことなんだけど。なんか話聞けたか?」


「話を聞くどころかこちらの話を聞かれたな」


「へえ、なんて答えたんだよ」


「戦う系の家業だと伝えた。深く詮索してこなかったし、ばれてないとは思うけど」


「なんで隠してるんだよ。もう隠す必要なくね?どうせばれるんだろ?」


――それはそうだが、なぜかまだ妖を統べる百鬼夜行の主であることを伝えられずにいる朔は、毎日届く文に目を落としたまま頷いた。


「毎回話す機会がなくて。最後はちゃんと伝える」


「そうした方がいいぜ。…なあ主さま、凶姫のこと…その…どう思ってる?」


そこでようやく朔が顔を上げると、雪男は正座して畏まって答えるのを待った。


「どう思ってる、とは?」


「そのー…女として見てるとか見てないとか、そういう感じのやつ」


「あれは女だろ。しかもとびきりいい女だ」


「!そう思ってるってことはー、そのー」


そこで雪男の意図がようやく分かった朔は、雪男の額を指で弾いて悶絶させた。


「嫁候補として、って言いたいんだろ?気にはなるけど、どうして気になるかは分からない。身の上を思ってのことなのか、それとも…まあとにかく分からない。朗報を待て」


まるで他人事のようにそう言ったが、朔に大切な誰かができることはとても喜ばしいことだ。

今までひとりの女に決めて寵愛したのは――柚葉以来のことになる。


「あのさあ、柚葉とは結局どうだったんだ?手は出してたのか?」


「出してない。周りがそういった目で見ていたのは分かってたから余計に何もしなかった」


…なんとも慎重な男だ。


とりあえず朔の今の心情は分かった。

後は側近は側近で対策を打って朔を…そして朔の人生に関わってくるかもしれない凶姫をも守る。

そう決まった。