それは想像を遥かに超える快楽だった。
それは例え様もなく甘い快楽だった。
それは例え様もなく――自分を男として感じた瞬間だった。
「私が教えるべきことはこれで以上だ。お前は全てにおいて優秀だった。お墨付きをくれてやる」
事が終わると椿は浴衣を着ようとしてその手を朔に止められた。
「これで以上?師匠は体術の師匠ですよね?これも体術ということですか?」
「そうだ。それが何だと言うんだ?」
「体術の師匠なら…最後に教えてくれた‟技”を極めさせるまでが仕事なのでは?」
「…詭弁だが一理ある。ならこうしよう。私に一日十戦中十戦全て勝てば、毎夜その‟技”とやらを教えてやろう。まあ、無理だと思うが」
――甘い果実の味を知ってしまった朔は、それを素直に聞き入れてこくんと頷き、今度は浴衣を着る手を止めずに自身も羽織を肩にかけて笑った。
「これは父も知っていることなんですね?」
「もちろん。私はお前を仕込むために呼ばれたんだ。私を落胆させるな」
ふっと妖艶に笑った椿が部屋を出て行き、朔ははじめて感じた疲労に目を閉じると朝まで寝入ってしまい、ついでに寝坊して寝ぐせがついたまま居間に移動して食卓を囲んだ。
…父は昨晩のことを知っているのだろうが、知らん顔をしている。
母に昨晩のことを言うわけにはいかず黙々と朝餉を食べた後縁側に移動して茶を口に運んだ時――
「大人の階段を一歩上っちゃったんだな」
「!ごほっ」
むせて咳き込み、涙目で顔を上げるとそこにはにやにやしている雪男が箒を片手ににじり寄ってきた。
「お、お前…なんで知って…」
「俺、ここの影の番長だから。で、どうだった!?どんなだった!?」
にやっと笑っただけに止めた朔を食い気味にさらににじり寄る雪男。
「言わないと息吹にばらすぞ。いいのか?いいんだな?!」
「卑怯だぞ!」
ごちゃごちゃ言い合いをしているふたりを微笑ましく見守る息吹だったが…
十六夜は難しい顔をしたまま腰を上げて、どこかへ行ってしまった。
それは例え様もなく甘い快楽だった。
それは例え様もなく――自分を男として感じた瞬間だった。
「私が教えるべきことはこれで以上だ。お前は全てにおいて優秀だった。お墨付きをくれてやる」
事が終わると椿は浴衣を着ようとしてその手を朔に止められた。
「これで以上?師匠は体術の師匠ですよね?これも体術ということですか?」
「そうだ。それが何だと言うんだ?」
「体術の師匠なら…最後に教えてくれた‟技”を極めさせるまでが仕事なのでは?」
「…詭弁だが一理ある。ならこうしよう。私に一日十戦中十戦全て勝てば、毎夜その‟技”とやらを教えてやろう。まあ、無理だと思うが」
――甘い果実の味を知ってしまった朔は、それを素直に聞き入れてこくんと頷き、今度は浴衣を着る手を止めずに自身も羽織を肩にかけて笑った。
「これは父も知っていることなんですね?」
「もちろん。私はお前を仕込むために呼ばれたんだ。私を落胆させるな」
ふっと妖艶に笑った椿が部屋を出て行き、朔ははじめて感じた疲労に目を閉じると朝まで寝入ってしまい、ついでに寝坊して寝ぐせがついたまま居間に移動して食卓を囲んだ。
…父は昨晩のことを知っているのだろうが、知らん顔をしている。
母に昨晩のことを言うわけにはいかず黙々と朝餉を食べた後縁側に移動して茶を口に運んだ時――
「大人の階段を一歩上っちゃったんだな」
「!ごほっ」
むせて咳き込み、涙目で顔を上げるとそこにはにやにやしている雪男が箒を片手ににじり寄ってきた。
「お、お前…なんで知って…」
「俺、ここの影の番長だから。で、どうだった!?どんなだった!?」
にやっと笑っただけに止めた朔を食い気味にさらににじり寄る雪男。
「言わないと息吹にばらすぞ。いいのか?いいんだな?!」
「卑怯だぞ!」
ごちゃごちゃ言い合いをしているふたりを微笑ましく見守る息吹だったが…
十六夜は難しい顔をしたまま腰を上げて、どこかへ行ってしまった。

