翌日起きるなり気分の悪さに辟易しつつ、居間に移るとそこには炊き立ての米の匂いが充満していて、思わず口元を手で覆った。


「姫ちゃんおはよう。気分はどう?」


「息吹さん…ええ、少しは回復した…と思います」


「そっか、ご飯食べれる?」


「ええ…」


すでに席についていた朔の視線を感じてすとんと席に座った凶姫だったが――みそ汁の匂いや漬物の匂い…全てにおいて吐き気を催してしまい、みるみる顔色が悪くなった。


「凶姫?」


「い、頂きます!」


視線を振り切って、息吹が用意してくれたのだからせめて一口だけでもと思って米を口に運んで噛んだ瞬間――


「う…っ」


「!どうした!?」


箸が音を立てて落ちると、朔が駆け寄ってうずくまって丸くなっている凶姫を抱き起した。


「顔色が悪いな、今度はお祖父様を呼ぶからな」


襲い来る吐き気で言葉を返せないうちに雪男が晴明との連絡用に使っている式を飛ばすと、柚葉は一言も話せない凶姫の枕元で同じように顔を青くして右往左往していた。


「どれ、少し緩和させて差し上げましょうか」


輝夜が凶姫の額に手をあてると、そこから身体全体にあたたかな光のようなものが満ちて、徐々に吐き気は治まったが顔色は悪く、輝夜はにこりと笑って顔を寄せた。


「大丈夫ですよ」


「何が……私…どうしたのかしら…」


「すぐに分かります。お祖父様が到着するまでそのままで居なさい」


「ええ…」


晴明が着くまでそのままじっとしていた。

凶姫の額に手をあてたまま、優しげな笑みをずっと浮かべていた。