彼女たちは正真正銘の家柄の良い姫君たちであり、柚葉や凶姫のような家業から成り上がった者たちではない。
故に矜持が高く、妖の世界で最も血筋が良く鬼族の祖である朔が半妖であることは本来ならば忌避されるものだが――
朔は強く美しく、また先代の十六夜である妻の息吹は人だったが子を多く育み、そして彼らを不思議な魅力で包み込んで不平不満を一切出させなかった。
「お祖母様か…またやってくれたな」
「奥方様からお声がけがあったからこそ我々はここへ来たのです。主さま、そろそろ嫁をお取りください。この娘たちは皆あなた様を慕い、思想も同じ者。あなた様の隣に立っても何ら遜色のない娘たちです」
「そう言われても俺にはその気がない。お祖母様が勝手にやったことだし、今はそれどころじゃないんだ」
‟渡り”が襲来したことは伏せられている。
朔としては戦場になる可能性のあるこの町にはこれ以上守らなければならないものを増やしたくないし、それに――
朔はすでに選んでいるのだから。
「数日滞在を許すが俺は忙しい。気が済んだらなるべく早く帰ってくれ」
朔が多忙なこと位は百も承知だが、ここまで来ておいて引くわけにもいかない。
彼女たちは伏し目がちな朔の圧倒的な美貌にぽうっとしつつ、脇に控える柚葉と凶姫を何度もちらちら見ていた。
そもそも、業を煮やした原因は文でもあるが、この屋敷にふたりの女が居ると知ったから乗り込んできたのだ。
「主さま…家柄は大事ですぞ。先代様は人を娶られましたがしかし…」
「俺は俺の好きなようにする。口出しをするつもりか?」
「い、いえ、そのようなことは。ですが私どもとしましてはそこなふたりの娘の素性が気になりますが」
「俺の知古の者たちだ。ふたりのことに関しては一切の苦言を禁じる。追い出されたくなければ順守しろ」
「かしこまりました」
「さっ、ここでやっちゃいけないこととか説明するからちゃんと聞いてくれ」
雪男の説明が始まると、凶姫がすっと立ち上がって居間から出て行った。
朔はそれを横目で見たが後を追わず、目を閉じて雪男の説明を聞いた。
故に矜持が高く、妖の世界で最も血筋が良く鬼族の祖である朔が半妖であることは本来ならば忌避されるものだが――
朔は強く美しく、また先代の十六夜である妻の息吹は人だったが子を多く育み、そして彼らを不思議な魅力で包み込んで不平不満を一切出させなかった。
「お祖母様か…またやってくれたな」
「奥方様からお声がけがあったからこそ我々はここへ来たのです。主さま、そろそろ嫁をお取りください。この娘たちは皆あなた様を慕い、思想も同じ者。あなた様の隣に立っても何ら遜色のない娘たちです」
「そう言われても俺にはその気がない。お祖母様が勝手にやったことだし、今はそれどころじゃないんだ」
‟渡り”が襲来したことは伏せられている。
朔としては戦場になる可能性のあるこの町にはこれ以上守らなければならないものを増やしたくないし、それに――
朔はすでに選んでいるのだから。
「数日滞在を許すが俺は忙しい。気が済んだらなるべく早く帰ってくれ」
朔が多忙なこと位は百も承知だが、ここまで来ておいて引くわけにもいかない。
彼女たちは伏し目がちな朔の圧倒的な美貌にぽうっとしつつ、脇に控える柚葉と凶姫を何度もちらちら見ていた。
そもそも、業を煮やした原因は文でもあるが、この屋敷にふたりの女が居ると知ったから乗り込んできたのだ。
「主さま…家柄は大事ですぞ。先代様は人を娶られましたがしかし…」
「俺は俺の好きなようにする。口出しをするつもりか?」
「い、いえ、そのようなことは。ですが私どもとしましてはそこなふたりの娘の素性が気になりますが」
「俺の知古の者たちだ。ふたりのことに関しては一切の苦言を禁じる。追い出されたくなければ順守しろ」
「かしこまりました」
「さっ、ここでやっちゃいけないこととか説明するからちゃんと聞いてくれ」
雪男の説明が始まると、凶姫がすっと立ち上がって居間から出て行った。
朔はそれを横目で見たが後を追わず、目を閉じて雪男の説明を聞いた。

