宵の朔に-主さまの気まぐれ-

「私も一緒に行きましょう」


「え…別にひとりで大丈夫ですけど…」


「あなたをひとりにすると兄さんがうるさいんですよ。反物屋でしたね?行きましょうか」


「前に焔さんに付き合ってもらった時もちょっとした騒ぎになったんです。鬼灯様…覚悟して下さいね」


はい、と返事をした輝夜と一緒に玄関で下駄を履き、いつも緩んでいる胸元を直してやって屋敷を出た柚葉は、案の定繁華街に着いた途端女たちの視線を一気に釘付けにした隣を歩いている男に密かにため息をついた。

…黙っていればかなり絵になる。

中性的なところがなんだか癖になる容姿だし、横顔はやはり兄弟というか、朔に似ている。

のんびりな性格が滲み出ていて高貴でいて上品――つまり非の打ちどころがない。


「…隣…歩きたくないなあ」


「これは失礼な。私はこんなに楽しいというのに」


「どこがですかっ。私すごく見られてるし視線が痛いですよ…。早く買い物をして帰りましょう」


元々引っ込み思案の性格な柚葉にとっては針のむしろだったわけだが、輝夜は柚葉のつむじを見下ろして歩きながら微笑を浮かべていた。


はじめて自分の秘密を言い当てたのだから、以前以上に柚葉に興味が湧いていた。


「鬼灯様ってやっぱり女遊びした系ですか?」


「なんですか藪から棒に。ですから求められたら受け入れる系です。お嬢さん、もし私に興味が湧いたら…」


「沸きません。そもそも私のことなんてどうとも思ってないくせに」


「ふふふ、そうでもないんですけどねえ。ああほら、見えましたよ反物屋さん。うちの御用達の店ではないですね」


「でも置いてある品物は良いものですよ。私のお店はここの隣の空き家なんです。じゃあ私ちょっとお話してくるのでここで待って…」


「私も一緒に店に入ります。外で待たされたら皆の視線に射殺されて死んでしまうかも」


押しの強さは朔にも負けない。

強引に柚葉の肩を抱いて店内に入って店主に腰を抜かされるほど驚かれたのは言うまでもなかった。