宵の朔に-主さまの気まぐれ-

「突然手荒なことをしてすみませんでしたね」


「びっくりしましたけど…もうからかうのはやめて下さいね」


「別にからかったつもりはないんですが。では失礼します」


輝夜が小さく頭を下げて退室すると――柚葉はおもむろに押入れを開けて布団を引っ張り出すと、その布団を被って真ん丸になって、そして叫んだ。


「きゃーきゃーきゃーっ!なんでどうして!鬼灯様の!馬鹿!」


――そんな柚葉の絶叫が廊下を歩いていた輝夜の耳に届き、吹き出しつつ居間に戻ると、訝しむ朔の顔を見て含み笑いをしながら隣に座って何食わぬ表情で茶を飲んだ。


「…」


「……」


「………で、どうした?」


「え?何がですか?ちょっと慰めてきただけですよ」


「上機嫌に見えるけど、違うのか?」


「ああええまあ、ちょっと言い当てられたことがありましてね、もう本当に口から心臓が飛び出そうになりました」


輝夜が驚くことなどそうそうないため、朔は密かにふたりが良い仲になればいいと思っているのが顔に出て、輝夜に腕を肘で小突かれた。


「いやらしい顔してますよ」


「いやらしいことをしてきたのはお前なんじゃないか?」


「ははは、秘密です。ところで兄さん。私に欠けているもののことですが…それって何だか分かります?」


またもやの唐突な問いに、朔は伏し目がちになって腕を組んで首を捻った。


「てんで想像がつかない」


「ですよね。いやあ、やっぱりすごいなあ。楽しいなあ」


――やはり上機嫌な輝夜が団扇で顔を扇ぎながら楽しそうにしているのを見ると、何故上機嫌なのか分からないながらも朔も嬉しくなってその肩を抱いた。


「本気なら協力するぞ」


「え?なんの話ですか?兄さんはやらしいことばっかり考えてますねえ」


「どっちがだ」


兄弟似た者同士。