宵の朔に-主さまの気まぐれ-

突然輝夜に唇を奪われた柚葉は、抵抗するのも忘れてまつ毛が触れ合う距離にある輝夜の顔を凝視していた。

もちろん頭の中は真っ白で、唇が離れても柚葉は言葉を発することなく輝夜を見つめ続けた。


「おや?もしや…はじめてでしたか」


「…え……あの…え……?」


ぺろりと唇を舐めて妖艶に笑った輝夜の表情ではっと我に返ると、それでも何故か抵抗できず、手首を掴まれたままの状態で目を白黒させていた。


「鬼灯様…今…何を…」


「お嬢さんが可愛い顔をしてたからつい。どうでした?嫌でしたか?」


「え…嫌っていうか…どうして…」


「だから、可愛い顔をしてたからですよ。嫌ではなかったのならもう少しお付き合いして頂きましょうか」


「え…っ」


今度は力強く唇を重ねられて、舌を絡められて身体がびくっと痙攣すると、輝夜は柚葉の背中を支えながらゆっくり押し倒した。


――今更ながら輝夜が男であることを強く意識して、はじめての口付けで息継ぎすることもできず顔を真っ赤にしているとようやく輝夜が離れたが…

目の前には輝夜の胸元から見える意外に鍛えられた胸が見えて――さっきまで朔たちのことでもやもやしていたことをすっかり忘れていた。


「な…どうしてこんな体勢に…待って…待ってっ、私、口付け…」


「ごちそうさまでした。どうにもあなたは男に耐性がなさそうな感じでしたが…意外とそうでもなさそうですね?」


そうだ、輝夜に触れられても、唇を奪われても、嫌ではなかった――


むしろ男は怖いと思っていたし言葉を交わすのも苦手だったのに、輝夜とはすらすら話せる。


「それは…どうしてだろう…」


「では次の段階に進みましょうか。兄さんの代わりと思ってもいいですよ」


「鬼灯様は…鬼灯様でしかありません」


頬に優しく触れる手――

この人は自分のことを好いてくれているのだろうか?

だが、求められれば誰にでも応えると言っていたこの男――


意図は分からなかったが、また唇を塞がれて思考をも奪われた。