宵の朔に-主さまの気まぐれ-

皆を解散させた後、ひとり部屋に残った輝夜は朔をじっと見つめた後唐突に切り出した。


「兄さん、今までお相手した方とはきれいにお別れしたんです?」


「え?なんだ急に」


「いえこれ結構重要なんです。清算はきっぱりすっぱり?」


真面目顔の輝夜にそう問われると、朔は今までのことを振り返って頷いた。


「重い女を相手にしたことはないと思うけど」


「そうですか、ならいいです」


「何の確認なんだ?」


「いえ私もよく分からないんですが、訊いておかなければと思いまして。後は色々調べてみますのでご心配なく」


昔から突拍子もないことを訊いてきたりする節のある輝夜に振り回されることなど日常茶飯事だった朔は、考えても無駄なことだと思って部屋を出ると、待ち構えていた凶姫に捕まった。


「月。訊いておきたいことがあるの」


「なんだ輝夜にしろお前にしろ」


「?なんのことか分からないけれど、月…やっぱり私も連れて行ってくれない?」


――朔はすぐ首を振って凶姫をがっかりさせたが、なかなか諦めてはくれなかった。


「私が。私があの男をここに呼び寄せてしまったの。私に責任があるの。それにあの男が死ぬのを見たいの。でないと…安心できないから」


「気持ちは分かるが目を配らなければならない者が居ると全力で戦えない。それは分かってほしい」


「でも…」


「また主さまがあなたに気を取られて命を脅かされる危険があると言っているのです。承服しなさい」


割って入ってきた焔の言葉に――凶姫は僅かに唇を開いて愕然とした。

そして朔は本人に言う必要がないことを知られてしまい、軽く焔を睨んだが本人はむっつりしたまま言い募った。


「違いませんよね?もう二度と主さまが寝込む姿など見たくはないのです」


「ちょ…ちょっと待って…。月が怪我を負ったのは…私のせいなの…?」


「お前のせいじゃない。気を取られた俺が悪いんだ」


「そんな…違うでしょ!?私が…あの時あの女に襲われそうになったから…?」


真実を知った凶姫は、ただただ愕然として、茫然としていた。

全て自分が悪いのだと知り――腰が砕けたようにへなへなとその場に座り込んでしまった。