宵の朔に-主さまの気まぐれ-

その頃部屋に戻った柚葉は――絶叫していた。


「やだやだ主さま…かっこよかったーっ!!」


身体を丸めてうずくまった姿勢になり、布団を被っての絶叫。

できれば外に穴でも掘って絶叫したかったのだがそれはあまりにも奇行に見えるだろうからやめておいたが…

先程の対輝夜、対雪男の戦いを見て、意味もなく戦うなんて嫌だと思いながらもひたむきな目で戦っている朔を見てどれほど胸が高鳴ったか――


「どうして…どうしてあんなに素敵なの!?誰だって好きになるに決まってるじゃない!」


「そうですねえ」


「えっ!?」


部屋を閉め切ったはずなのにすぐ傍から聞こえてきたのんびり声に思わず飛び起きた柚葉は、髪がくしゃくしゃのまま茫然とした目でにこにこしている輝夜を見つめた。


「鬼灯様…ですから勝手に部屋に…それに気配を消さないで下さいとあんなに…」


「いやあ、あまりにもお嬢さんが面白かったので。…ふふっ、布団を被って…ふふふ」


面白そうに含み笑いをしている輝夜に怒る気力も失せた柚葉は、唯一この秘めた思いを素直に打ち明けることができる輝夜が来たことで実はすこしほっとしていた。


「主さまってどうしてあんなに素敵なんでしょう…」


「持って生まれたものですからどうしようもありませんねえ。兄さんは昔から格好良かったですし、私も何度襲おうと思ったことか」


「えっ!?」


「冗談ですよ冗談。その思いを凶姫と分かち合えばいいのに」


「そんなことできません。私は傍から見れば横恋慕しているように見えるんでしょうから…」


「そうでしょうか?誰だって褒められれば嬉しいものですよ。さあそうと決まれば今すぐ伝えに行きましょう」


「わ、ほ、鬼灯様!」


輝夜に手を引っ張られて立ち上がった柚葉は、普段穏やかな輝夜の有無を言わさぬ強引さにやはり朔の兄弟だなと何故か納得しながら朔の前に無理矢理連れ出された。